ところで、こうして本を出されたり、お店を始められるまでの一連の過程を拝見しますと「スコスとは何か?」について、ご商売という以前におふたりの「創造的な表現の場」という言葉がぴったり合う気がするのです。私はこうした「創る」という行為に敬意を表さずにはいられません。


寺村英次さん


寺村さんにお話をおうかがいしました。スコスのスタート当初は、実は普通の店舗ではなかったそうです。おふたりが個人的好みから「仕入れてしまった」決して少なくはない文房具を販売するために、音楽雑誌のページに小さな広告欄を確保し、「文房具売ります」と一言載せたのが最初。そして広告を見て連絡をしてくれた希望者に「筆記具類を撮影した写真をそのまま紙に貼り付けた」急ぎ作りのカタログを送ったのが始まりとのことです。当時はまだインターネットが一般に普及していなかった頃。こんな様々な工夫や苦労のお話には、今の世の中とは違う格別なワクワク感があります。ちなみに、最初に連絡をしてきたのがたった数人のお客さんだったことから、そのお客さんへの感謝の意味も込めて「Small Circle of Stationery」の言葉を起草。略して「SCOS」になったというエピソードを教えてくださいました。素敵です。


その後、いくつかの小冊子カタログを作るも、文房具は商品の入れ替わりが激しいことから徐々にカタログ制作の負担が大きくなってしまい、思いきって東京・本郷に小さなお店をオープンされました。それが 「スコス ステーショナリーズ・カフェ」 。お店の噂は本の発売や雑誌記事、あるいはインターネットと共に広まり、多くの文具ファンが(時に同業者さんも)足を運ぶ、新たな文房具の聖地となったのであります。




ところでスコスさん。本郷本店はビルの建替え工事に伴い、2012年の8月(予定)までクローズになるそうです。新しく生まれ変わる本店が今から楽しみ。その建替えを聞きつけて、私はクローズする寸前の2011年12月に本郷本店にあつかましくも押しかけ、USTREAM中継をさせていただきました。私が聞き役になり、寺村さんにスコスの現在に至るまでのお話や店内のご案内をしてもらいました。建替え前の店内の貴重な映像もお楽しみいただけます。この番組をご覧になりたいかたは、私もメンバーになっているUSTREAM制作集団:「イドラPスタヂオ」の公式ページにアクセスしてください。リンク先に録画版があります。 (文房具雑談#31(本郷SCOS本店)はこちら)


USTREAM番組のヒトコマ


スコスは本郷以外にもお店が2店舗あります。ひとつは東京・銀座「プランタン銀座」内にある「SCOS プランタン銀座」。もうひとつは東京駅八重洲南改札内の「Eki scos・東京駅京葉ストリート店」です。


「SCOS プランタン銀座」


Eki scos・東京駅京葉ストリート店

 

いずれのお店も本店と同様、「スコスのエキス」がギュッと詰まっています。すでに文房具がお好きな方も、そうでない方も、スコスで新しい楽しさを発見してみてください。 


【関連サイト】
「スコス ステーショナリーズ・カフェ」 
公式サイト
 

わだ・てつや 東京小猫商会:文具部1号、コモノ部3号。文房具サイト「ステーショナリープログラム」主宰、ウェブショップ「信頼文具舗」店長。著書「文房具を楽しく使う」シリーズ(早川書房刊)ではノートや筆記具を趣味として楽しむための基礎的な知識を提供。近年の文房具人気を支えるリソースのひとつとなっている。その他、商品開発・ブランディング等のコンサルティング、講演、イベントプロデュースなどを行っている。 ブログ公式HP