ネットで話題の“泣けるラーメン漫画”

『ラーメン大好き小泉さん』が取っ付きやすさ、『ラーメン発見伝』が情報量の多さを特徴とするなら、『ラーメン食いてぇ!』(林明輝/講談社)は“ドラマ性”を武器にした新機軸のラーメン漫画だ。

元は2014年に講談社コミックプラスで掲載された作品だが、後にWEBコミックサイト「モアイ」で無料配信を開始。公開されるやいなやネット上では「泣けた!」「感動した!」と絶賛の嵐。あまりの反響に単行本化が急遽決定したほどだという。

主人公は3人で、それぞれが別の場所で絶望的な状況にいるところから本作はスタートする。ひとりは海外での番組ロケ中に遭難して、死を待つばかりになった有名な料理研究家の赤星。ひとりは妻に先立たれ満足な味が出せなくなり、自殺を実行しようとするラーメン屋の老店主・紅。ひとりは親友から手ひどく裏切られ、自殺未遂した女子高生・茉莉絵。

無関係に見える3者だが、茉莉絵は紅の孫で、赤星はかつて取材で紅の店を訪れてラーメンの味に惚れ込んだという接点があった。そして数奇な運命は死を目前にした3人を再び結びつけていく。

「またあの店でラーメンを食いたい!」との一念で力を振り絞って、現地の人に偶然助けられた赤星。茉莉絵の自殺未遂を知らされ、自分が死ぬどころではなくなった紅。潰れゆく祖父のラーメン屋を継ぐという新しい生き甲斐を見つけた茉莉絵。奇跡的に生還した3人の距離は「ラーメン」を中心に少しずつ近づき、やがて感動の大団円を迎えるのだった……。

ハッピーエンドだとネタバレしてしまっても問題ないほどストーリー展開は波乱に満ちていて、またキャラクターも悩みを抱えながら生き生きと躍動している。ちょっと他では味わえないハイレベルな漫画である。

かくいう筆者自身も「ネットで大評判? そうそうおもしろい漫画なんて出てくるはずないだろ」と思いつつ読み始め、一度も休まずラストまで読破してしまったひとりだ。そして最終話のあるコマを見た瞬間、泣けた。まさしく看板に偽りなし。いま一番ホットなラーメン漫画だと太鼓判を押したい。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。