戦乱の中で生き別れになった父との、たったひとつの“家長として家族を守れ”という約束に運命を決定付けられた少年ドクス。彼は、この言葉を道しるべに、家計を支え、優秀な弟を大学に進学させるため、妹に立派な結婚式を挙げさせるため……と、自分の夢を犠牲にして、金を稼ぐために西ドイツ派遣やベトナム戦争へと赴く。

泥にまみれ、血を流し、ただひたすらに家族のために働くドクスの姿にはただただ頭が下がるばかり。そんな彼の苦労が、現代の“家族”の笑顔にも繋がっている。だから、簡単にドクスを否定してしまう家族たちに苛立ちを覚えるも……はて、それって自分にも当てはまるのでは? と、筆者は思わず自己を振り返ってしまった。

この映画は、ユン・ジェギュン監督の、現代の礎を築いてくれた世代への思いから誕生した作品だそう。“貧しかったあの時代。自分ではなく家族のために生涯を生きた父を見ながらいつも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。祖父、祖母、そして父、母の世代の全ての人に感謝の気持ちを贈りたい”。この思いはドクスや、ドクスを取り囲む人々を通して全編から、温かな気持ちや敬意として伝わってきた。

また、戦後の復興で貧しいながらも一生懸命に生きる人々の姿や、喧嘩しながらも仲の良い家族団らんの風景などは、日本人にも懐かしさと共感を覚えるのではないだろうか。つらい時代にあっても、ユーモアや笑いを交え、前向きに家族一丸となる姿は、忘れかけていた絆を気付かせ感動をくれる。そして、何よりも、家族の大黒柱としてつねに勤勉であり続けるドクスの姿は、守るべき人たちがいる者の強さと、家族・友人、人々との繋がりこそが、人生を豊かにしてくれるということを教えてくれる。

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