『ラブ&ピース』は園監督の「魂の集大成」であり、「丸ごと園子温」でもある

©「ラブ&ピース」製作委員会

冒頭に「『ラブ&ピース』は誰も死なないし、一滴の血も出ない」と書いたが、特撮技術監督との話し合いの際に、園監督は「(この映画では)人は死なないんだ」と、そのことに非常にこだわっていたそうだ。

これまでの園作品を見てきた人には驚きの発言だと思うが、別のインタビューで監督は、「実際の僕はこの作品みたいなファンタジー映画の人間だ」と語り、さらに「撮ってみても無理がなかったし、やっぱりこっちが本領」とコメント。そして、『ラブ&ピース』は「魂の集大成」「丸ごと園子温」であるとまで述べている。

ミュージシャンになる夢、会社の同僚だった裕子(麻生久美子)と付き合いたいという夢、その良一に足りないピース(かけら)をミドリガメが埋める役割を果たす。これをファンタジーと言わずして、何と言おう。監督が本当に作りたかったものが長い時を経て、ここでついに開花したのだ。

園子温監督の「魂の集大成」であるファンタジー映画『ラブ&ピース』は、あなたに足りないピースに気づかせてくれるかもしれない。そして何より、これからの園作品のターニングポイントになりそうな作品だ。

『ラブ&ピース』
6月27日(土)TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本:園子温
出演:長谷川博己  麻生久美子/松田美由紀 西田敏行
<声の出演> 星野源 中川翔子 犬山イヌコ 大谷育江
ストーリー:楽器の部品会社で働く、うだつの上がらない男・鈴木良一はミュージシャンになる夢は頓挫し、同僚の寺島裕子に想いを寄せているものの、小心者過ぎて声もかけられない。そんなある日、良一はデパートの屋上で一匹のミドリガメと目が合い、運命を感じるのだった…。

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会社員からテレビ番組やDVDなど映像関係の英日翻訳者を経てライターに。 ハーバルセラピスト、アロマセラピーアドバイザーの資格あり。子供の頃からお笑い好きで、当時読んだ「落語全集」は宝物。でも、なりたかったのは落語家ではなく小説家。今、こうして文章を書いて人に伝える仕事をしていることに喜びを感じてます。