世界初、TransferJet搭載SDHCメモリカードが登場

デジタルカメラに装着したままで、PCやスマートフォン(スマホ)、タブレット端末にワイヤレス送信できるSDメモリカードの普及が進んでいる。そんななか、高速転送と手軽さにより注目を集めている近接無線転送技術「TransferJet」を搭載した世界初(2015年6月30日現在)のSDHCメモリカードが7月31日、東芝より登場する。そこで発売直前のTransferJet搭載SDHCメモリカード「SD-TJA016G」をひと足早く使ってみた。

●そもそも近接無線転送技術「TransferJet」とは?

現在、デジタル機器はさまざまなワイヤレス技術を採用している。例えば、Wi-FiはPCやスマホ、タブレット端末などのデバイスをネットワークにつなぐために利用されている。また、Bluetoothはデバイス間の近距離接続に利用され、省電力で運用できるのが特徴。また、NFCは機器同士をかざすだけで素早く認証できるといった特徴がある。

近接無線転送技術「TransferJet」もそんなワイヤレス技術のひとつで、「TransferJetコンソーシアム」が規格を策定し、普及を促進しているものだ。最大の特徴は高速データ転送。最大実効速度は375Mbps(論理値)となっており、ファイル容量や通信距離によって送信時間は変化するが、100MBの動画も約3秒で転送できるのだ。

また、通信距離は約3cmと非常に短く、送受信する機器同士を近づける必要がある。一見デメリットのようにも見えるこの特性だが、逆に第三者にデータを盗み見られる可能性が少なくなるという大きなメリットを生んでいる。

すでにTransferJetを搭載したスマホとして富士通の「ARROWS NX F-04G」が登場しており、今回発売したTransferJet搭載SDHCメモリカードを装着したデジタルカメラを近づけるだけで写真を高速でスマホへ送信できる。また、PCやタブレット端末、iOS端末などに取り付けられる対応アダプタもあり、今後さらに対応デバイスが登場するだろう。

●TransferJet搭載SDHCメモリカードを活用する

では早速、TransferJet搭載SDHCメモリカード「SD-TJA016G」を使ってみよう。今回はキヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 8000D」に「SD-TJA016G」を挿入した。TransferJetによるワイヤレス送信にカメラ側の初期設定は不要で、対応デバイスを受信状態にして近づけるだけで送信ができる。まずはスマホに送信してみよう。

TransferJet搭載のスマホ「ARROWS NX F-04G」のホーム画面上にあるTransferJetアプリを起動すると受信状態にできる。送信側である「EOS 8000D」のカメラ画面で送信したい写真を選択。この状態で「EOS 8000D」のSDメモリカードスロット近くに、「ARROWS NX F-04G」の受信部を近づけると選択した写真の取り込みができる。

認識・受信できる位置関係は意外とシビアだったが、安定して通信できる位置で固定すれば受信速度は非常に速い。1枚8MB超の非常に大きな写真も、1枚1秒かかることもなく、次々と受信することができた。

最近では気に入った写真が撮れたら、すぐにSNSにアップするのがトレンド。ステキな風景やランチで食べた料理などちょっとしたシーンも写真撮影してSNSにアップする人も多いだろう。

しかし、写真が趣味の方やこだわり派の方には、スマホで撮った写真では満足できない人が多い。スマホのカメラ性能は日々向上しているとはいえ、デジタルカメラと比べるとまだまだ、といった部分が多い。TransferJetによる送信はそういうこだわり派の人にお勧めだ。

デジタル一眼で撮影したこだわりの写真を、TransferJetで素早くスマホに送信すれば、いつでもどこでも“作品”をSNSにアップできるというわけだ。もちろん、こだわりの写真をその場で友人や家族のスマホに送信してシェアするという使い方もお勧めだ。

●タブレット端末にアダプタを装着して送信する

2015年7月30日現在、TransferJet搭載のタブレット端末はまだ登場していない。しかし、TransferJet対応アダプタを装着すれば、すぐに利用できる。スマホとタブレット端末の違いは、画面サイズが大きいことにある。このため、撮影した写真をサッとタブレット端末に送信すれば、撮影場所で写真をきめ細かくチェックすることができるのだ。

例えば、季節の花を至近距離で撮っている場合など、デジタルカメラ搭載の液晶モニタだけではピントの位置やぼけ具合、そして色目などが判断仕切れないことがある。そこで、タブレットをサッとカメラにかざして、TransferJetで送信すれば、撮影した画像をより大きな画面でチェックすることができる。

テストではiPad miniにiOS用のTransferJet対応アダプタを装着して、カメラから画像を送信した。TransferJet搭載の「ARROWS NX F-04G」と比べると送信速度は若干遅かったが、それでも画像1枚の送信に1秒もかからない。そして送信した画像は「写真」アプリから画面いっぱいに表示することができる。細かな部分も隅々までチェックすることができた。

また、VAIOが今年春に発売したクリエーター向けのタブレットPC「VAIO Z Canvas」には、初回生産分にTransferJet対応アダプタを付属している。

同モデルは、Adobe RGB 95%カバーの広色域ディスプレイを採用し、さらにエックスライト社のカラーマネジメント機能にも対応している。つまり、USB端子に装着したTransferJet対応アダプタにデジタルカメラをかざすだけで、すぐにその場で撮影した写真をカラーマネジメントされたディスプレイでチェックできるのだ。

これは本格的な写真作品を撮る方々にとって非常に有効。すでにアダプタ付属モデルの販売は終了しているようだが、市販のTransferJet対応アダプタを追加するだけで同様の使い方ができる。

●PCに一括送信して写真を保存する

デジタルカメラで撮影した写真は、何らかの形でPCにコピーして保存しておきたい。専用ケーブルとカメラを使って取り込む方法や、カメラからSDメモリカードを抜いてPCのスロットに装着する方法などがあるが、どちらもひと手間かかって面倒。TransferJet搭載SDHCメモリカードならワイヤレスで簡単に送信できるので便利だ。

方法はいたって簡単だ。USB接続のTransferJet対応アダプタをPCに装着し、そこにデジタルカメラを近づけて、専用のソフトを起動するだけ。420万画素の「EOS 8000D」で撮影した写真も非常に早く送信することができた。

さらに便利だったのが、カメラ側の設定が不要で、PC側から受信設定を行うだけで受信できることだ。また、Wi-Fiを利用する場合のように、受信時にインターネット接続が切れるといったこともない。SDメモリカードを抜いて転送する方法のように、転送後にデジタルカメラを持ち出したときにSDメモリカードを入れ忘れたといったミスも発生しないのだ。

●これからの写真送信方法として、高く期待したい

TransferJetの普及は、いまようやく始まったばかり。搭載機器はまだ少ないが、TransferJet対応アダプタを使えば、手持ちのPCやスマホ、タブレット端末でもすぐに利用できるようになる。

今回はTransferJet搭載SDHCメモリカードを中心に写真の送信を紹介したが、スマホ同士での連絡先や動画のやりとりや、PC、スマホ、タブレット端末間で各種ファイルのやりとりもできる。これまではケーブルでつないだり、同一ネットワークに接続したり、また、クラウドを経由して転送していたファイルも、TransferJet対応機器同士を近づけるだけで手軽に転送できるようになるのだ。まずは、使いたい機器にあったTransferJet対応アダプタを追加してぜひ試してみよう。