春の新生活に向け、例年、携帯電話の新規購入・機種変更が増える3月、4月。今年の春は、大学入学や就職を機に、スマートフォンを手にする人が多かった。「BCNランキング」によると、2012年3月のスマートフォンの販売台数は、過去最大を更新。携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合も、これまで最も高かった2011年12月の77.0%を0.8ポイント上回る77.8%に達した。従来型携帯電話には、子どもやシニア向けの端末も含まれており、実質的に販売台数構成比は8割以上とみていいだろう。以前は顕著だった地域差も縮小し、スマートフォンは全国にまんべんなく浸透している。

●「iPhone 4S」と新たに防水に対応した「Xperia acro HD」が人気

量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の3月の販売台数1位は、NTTドコモのAndroid搭載スマートフォン「Xperia acro HD SO-03D」だった。2位は、前月と変わらずソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」の16GBモデル。3位には、前月20位から急上昇した「GALAXY NEXUS SC-04D」が入った。一方、1月と2月は1位だった「ARROWS X LTE F-05D」は4位に、2月に3位だった「AQUOS PHONE SH-01D」は14位に、5位だった「GALAXY S II LTE SC-03D」は11位に下がった。

「Xperia acro HD」は、約4.3インチの高精細HDディスプレイ、1.5GHzのデュアルコアCPUを搭載したXperiaシリーズの日本向けモデル。ドコモ版「Xperia acro HD SO-03D」が1位、au版「Xperia acro HD IS12S」が8位につけている。シングルコアCPUの前機種「Xperia acro」よりも全体的にスペックアップし、特に有効約1210万画素の高画質なカメラや、新たに対応したIPX5/IPX7等級の防水性能が好評のようだ。携帯電話に防水を求めるニーズは強く、今や国内メーカー製スマートフォンのほとんどは、何らかの防水性能を備えている。

トップ10内に、2キャリア合わせて4機種ランクインしている「iPhone 4S」をキャリアごとに合算すると、シェア9.9%でソフトバンクモバイル(SB)の「iPhone 4S」がトップに立つ。シェア8.4%の「Xperia acro HD SO-03D」は、実質的には2位だ。ほとんど同一機種といっていい「Xperia acro HD IS12S」を加えても、「Xperia acro HD」のシェアは11.4%にとどまり、SB版・au版を合算した「iPhone 4S」の17.2%には及ばなかった。

とはいえ、週次集計では、ドコモの「Xperia acro HD SO-03D」は、発売日を含む3月第2週(2012年3月12日~18日)から直近の4月第1週(4月2日~8日)まで、4週連続で1位になっており、過去の人気機種同様、ロングセラー端末になりそうだ。なお、3月第2週は、「Xperia acro HD SO-03D」などが大量に売れたために、携帯電話の販売台数に占めるスマートフォンの割合は80.3%に達し、週次集計で初めて8割を突破した。その後は、元の70%台に戻っている。

●値下がり機種が売れたドコモ、低迷していた「GALAXY NEXUS」が2位に食い込む

続いて、主要3キャリア、ドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、ここからはランキングがわかりやすくなるように、通常、キャリア・内蔵メモリ容量ごとに別々にカウントしている「iPhone 4S/4」を、容量が異なっても1機種としてカウントしている。

ドコモは1位から10位まで、すべてAndroid搭載スマートフォン。しかも、値下げに伴って、当初は振るわなかった「GALAXY NEXUS SC-04D」や「LUMIX Phone P-02D」、発売から日のたった「Xperia arc SO-01C」が順位を上げた。なかでも「GALAXY NEXUS SC-04D」は、全国でかなり安値で販売されたらしく、それまでの低迷ぶり――ドコモのみで2011年12月は19位、2012年1月は32位、2月は13位――が嘘のように販売台数が急増した。在庫一掃のために不人気機種や旧機種を安売りすることは市場の原理に沿ったものとはいえ、ここまであからさまな投げ売り状態は、正直、メーカーやキャリアの戦略ミスではないのかと首を傾げざるを得ない。

●au、ソフトバンクモバイルは「iPhone 4S」がトップ、6か月連続

auは、「iPhone 4S」がシェア28.4%でトップ。昨年10月以来、6か月連続1位だ。5位、10位以外はすべてスマートフォン。ただ、3位以下になると、シェアは一ケタ台にとどまっている。

ソフトバンクモバイルも「iPhone 4S」がトップで、2位に「みまもりケータイ」、3位に「iPhone 4」が続く。2012年4月8日までの累計で、「iPhone 4S」のキャリア別シェアはソフトバンクモバイルが60.8%で約6割を占めているが、3月に限ると、ソフトバンクモバイル57.5%、au42.5%となり、auがやや盛り返している。

●スマートフォンの販売比率の地域差が縮小、どのエリアも7割を超える

3月は、「Xperia acro HD」などの新機種の発売、端末価格の値下げ、学生割引や各種キャンペーン、そして季節需要が重なり、スマートフォンの販売台数はどんどん積み上がり、販売台数は前年同月比197.1%と、前年のほぼ2倍に増加した。

昨年夏の時点では、地域によって開きがあったスマートフォンの販売台数の比率(詳しくは<スマートフォン人気に地域差、東京圏では携帯電話全体の6割を超える>を参照)も、昨年12月以降は縮小し、3月は全国をおおまかに四つ(東京圏・名古屋圏・大阪圏・その他)に区分した全エリアで7割を超えた。以前はなぜか数値が飛び抜けて低かった大阪圏も、全国平均の77.8%よりやや低い74.3%まで上昇している。

スマートフォンの急増に伴うパケット通信量の爆発的な増加や通信障害に対する対策、アプリのセキュリティに対する懸念など、未解決の問題を抱えながらも、新しい季節の始まりとともに、スマートフォンは全国で一段と普及しつつある。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。