写真左から馬渕英里何、ともさかりえ、南 果歩 撮影:源 賀津己

戦後の社会で逆境の中をたくましく生きる在日コリアンたちの姿を鮮烈に描き、演劇界に衝撃を与えた鄭義信による『焼肉ドラゴン』『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』が新国立劇場で再演される。

各作品でヒロインを演じる馬渕英里何、ともさかりえ、南 果歩による鼎談が実現! 鄭作品の何がここまで見る者の心を打つのか? その魅力について語ってもらった。

 

鄭さんの企画は「やります!」と即答

――演劇はもちろん、鄭さんは『月はどっちに出ている』『血と骨』など映画脚本でも活躍されていますが、みなさん、鄭作品との出会いは? 

南さんは4年前の『パーマ屋スミレ』初演にも主演されていますが…

南:今まで鄭さんのいろんな作品を見てたので『パーマ屋スミレ』の話をいただいた時は、ペラ2枚ほどの企画書だけだったんですが、その日のうちに「やります!」って返事しました。

それくらい、ご一緒したい劇作家演出家だったので、勝手に「これは運命だ!」と思い込んでました(笑)。

馬渕:私は、観客としてではなく、演出家と女優という関係が最初で2006年に『GS近松商店』という花園神社の境内で上演された作品が最初です。その後、観客として『焼肉ドラゴン』の初演を見ました。

ストーリーはそれぞれ違うのに、どこか“傷んでいる”人々が描かれていて…。『GS近松商店』での役と今回演じる静花と、どこか似ているところもあるんですよね。

南:『パーマ屋スミレ』もそう。

以前、鄭さんが韓国でお芝居をやられて、見に行ったらそれも散髪屋の話で姉妹が出てきたの(笑)。話はぜんぜん違うんだけど、自分がそこに出てくるような気になりました(笑)。

家族や近しい人が、その土地にどう根差して生きているかを描いてるという意味で、この三部作もやっぱり、親戚筋なんだなと感じますね。

ともさか:私は実は、これまで全く鄭さんの作品を見てないんですよ。なのに、お話をいただいた時、自分でもよく分からない内に「やります」って言ってました(笑)。

ただ、俳優の友達からも「面白い」と聞いてたので、それなら私も好きなはず! と。その直感を信じてます。

ここまで来たら、あえて過去の作品を見ないで、真っ白な状態でやるのもいいのかな? と思い始めてます。

『たとえば――』だけは、演出も鄭さんではなく鈴木裕美さんで、そういう意味でも他の2作とはまた異なるので。裕美さんと一緒に冒険してみようと思います!