飼い主が損害賠償を請求されるケース

ここでは、猫の外飼いによって迷惑を受けた人から、飼い主が損害賠償を請求され得るケースを細かく見ていきたい。

まず、猫が他人宅の庭をフンで汚したり、自動車のボンネットを傷つけたりするトラブル。この場合、フンの処理にかかった人件費や慰謝料、自動車の修理代などの賠償責任を飼い主は負う可能性が高い。

また、猫が他人を傷つけた場合は、治療費や慰謝料、休業損害など広く賠償責任を負う可能性がある。さらには、死亡させてしまった場合、慰謝料に加えて葬儀代、将来の逸失利益(その人の将来の稼ぎ分)にまで責任がおよぶことも。

猫に人を大ケガさせるほどの腕力はないから外飼いしても大丈夫だろう、と考えてしまいがちだが、実はそうとも限らないリスクを秘めていると篠田弁護士は話す。

「もし猫嫌いの人に近寄って、その人が驚いて転倒したとします。それにより高額の治療費がかかったり、死亡または重い後遺障害が残ったりした場合は、何百万から何千万という賠償責任が発生する可能性があります。大型犬のように直接危害を加えなくても“猫のせいで損害が生じた”と見なされ、法的責任は免れないのです」(篠田弁護士)

人や物品に直接的なダメージはなくても、発情期の大きな鳴き声で近隣住民に騒音被害を与えた場合、受忍限度(我慢できる限界)を超えていれば慰謝料を支払うことになる可能性がある。

ちょっと意外なところでは、猫被害への対策にかかる費用も請求しうるとのこと。侵入防止フェンスの設置費用、猫よけスプレーの購入費などがこれに該当する。

「外飼いの猫に敷地を汚されたことがある、または近いうちに被害に遭うと予想されている場合は、そのための“猫よけ対策”に必要となった費用を飼い主に請求することができます」(同)

コストや手間の関係で、実際に「猫よけスプレーの代金を支払え」といった訴訟を起こす人はいないだろうが、これだけ広い範囲で飼い主の賠償責任が生じうることは知っておきたい。