「映画『アバター』の大ヒットで3D元年となった2010年、全国の映画館で一斉に、デジタル設備の導入が進みました。そのことで、大スクリーンの迫力が活かされ、また大勢で観ることで楽しさが増幅するような、映画以外のデジタルコンテンツを上映する体制が整ったことが大きいでしょう」

ODSがもたらす、映画館側のメリットは小さくない。アーティストやスポーツチームは、もともと特定のファンを抱えており、一定の集客が期待できる。コンテンツの合い間に映画の予告編を流すことで、普段は映画館に足を運ばない層にも、上映作品のアピールをすることが可能だ。一方で、イベント主催側においても、チケットが取れなかったファンや遠方にも、臨場感ある映像を届けることで、さらに客層を広げる効果が期待されている。

「ODSの数が増えれば、映画館は『朝から晩まで同じ映画を上映する』というスタイルから、時間に合わせてコンテンツを選ぶスタイルに変わっていくことも考えられます。例えば、現役世代の観客が少ない平日の午前中は、お年寄り向けに演劇や落語を上映する。そうして、ユーザー層に合わせて多様なコンテンツが提供されることで、映画館という施設が持つ意味合いが大きく変わっていくと思います」

堅調に数を増やしているというODS。映画館は新たな総合エンタメ施設として、活気を取り戻しつつある。

はしかわ・よしひろ 1981年、神奈川県生まれ。編集プロダクションblueprint所属のライター、編集者。ビジネス・ネットサービス・グルメ・映画・音楽・コミック・ゲーム・スポーツなど、幅広い分野で取材・執筆を担当。構成を担当した書籍に『まな板の上の鯉、正論を吐く』(堀江貴文/洋泉社)、『伝説になった男~三沢光晴という人~』(徳光正行/幻冬舎)など。