偏差値やテストの点数など、日常的に結果を意識する機会が多い中学受験。

さらに、周囲には自分と同じく高みを目指す同級生たちが溢れ、親が思っている以上に中学受験は子どもにとってプレッシャーになるものです。

そんなプレッシャーを少しでも軽減させてあげようと、子どもに先取り学習をさせようとしているパパママも多いのではないでしょうか?

一見、周囲より一歩先を行くことで、子どもの自信を伸ばすことに対して効果的であるように見える先取り学習。実はこの先取り学習は、中学受験の失敗を招いてしまう可能性があるのです。

今回は、理数系専門塾エルカミノ代表であり、『中学受験で成功する子が 10歳までに身につけていること』の著者である村上綾一さんにインタビュー。

中学受験において、先取り学習をさせてしまうことの弊害についてお聞きしました。

先取り学習は“中学受験最大の敵”を招いてしまう!?

――村上さんは、著書の中で、「先取り学習は逆効果」とおっしゃっていますが、ズバリ理由は何なのでしょうか?

村上綾一さん(以下、村上)「僕がむやみに先取り学習をさせることに反対している理由は、単純に子どもが飽きてしまうからです。

ただ飽きるだけ、と言ってしまえばそこまで大きな弊害に聞こえないかもしれませんが、実は中学受験においてはこの「飽き」が最大の敵なのです。

先取り学習をしてしまうことによって、塾や学校で習う内容に新鮮味がなくなってしまい、学習に対する意欲が低下してしまう可能性があります。

特に理科や社会などの暗記科目に関してはそれが顕著ですね。」

――しかし、飽きが出てきたとしてもすでに先取った学習内容に関して、しっかり頭に入っていれば問題はない、ということはないのでしょうか?

村上「皆さん、中学受験をものすごく難しいことのように捉えているのですが、実は、中学受験の試験に出る問題というのは8割が基礎、2割が思考力を問われる問題で、出題される範囲が結構限定的だったりするんです。

先取り学習によって、意欲が低下してしまっている状態では習得に1年かかってしまうことでも、好奇心があればほんの1ヶ月で追いついてしまいます。

しかも、その意欲の低下というのは全教科に影響してきてしまうので、先取り学習で成績が上位だった、飛び級したなどの優秀と思われた子がどんどん成績を下げてしまい、志望校に合格ができないという事態を招く可能性もあります。

子ども自身が『もうちょっと前に知っていればよかった!』と思うことがあったら、それが学ぶ時期として最適なのです。その瞬間は好奇心に溢れていますから。

大切なことは、前もって知識を詰め込むことではなく、学習に対する子どもの好奇心を育てることです。」