お笑いVSアメリカンジョーク! 日本のバラエティーとの違いはどこにある?

田中:日本のテレビの視聴者が、英語が全部分かると仮定して、アメリカに行って番組を見たら、つまんなさに愕然とすると思いますよ。

日本のバラエティーの方が断然、おもしろいんじゃないのかな。

生まれ育った土壌もあるから一概には言えないけど、やっぱ単純ですもんね、向こうのお笑いって。

太田:言ってみれば“アメリカンジョーク”ってのは、つまんないじゃない?

アレやっちゃうのは、もう恥ずかしいじゃない? 日本人はやっぱり、そういうのは「ウワッ、かゆい!」ってなる。

田中:もっと繊細なんだよね。あんなんじゃない、もっと深くて繊細なんだけど。

そりゃ大スターが、世界の注目するアカデミー賞の場で、アメリカの大統領を笑いにして会場を「ワーッ」て沸かせて、あんな風に決められちゃうとね。たしかにカッコいいし、「お! これだ! 一番“高度”な笑いだ」って思いがちなんだけど、とんでもないですよ。

太田:日本アカデミー賞の、無様なことね。それをマネしてやるから、ああなっちゃうよね。

田中:(笑)

それこそ、落語とかの良さなんか、分かんないんじゃないですか。

太田:“照れ”とか“恥”とか、そういうの。それをちょっと隠して、っていうのが日本人でしょ?

大上段に構えて、アメリカ人みたいに無神経に、キザなことやれないっていうところが。

田中:それこそ「M1」みたいなところで、ああやって若手が10組出てきて5分ずつネタをやるじゃないですか。アメリカで、もしああいう感じの番組があったって、まあ似たようなのばっかり出てくると思いますよ。

日本の方がはるかに細やかで、ほんっとに多様性があるんだっていうことを、知識人の人たちは知らな過ぎる。だからお笑いを評する時、大概そうなっちゃうんですよね。

撮影:小林裕和

――ところで、そんな日本のお笑い界の第一線を走り続けてこられた一方で、田中さんには私生活でこの1~2年、大きな変化がありましたよね。

パパになって約1年8カ月、今年5月には新しいご家族も増えられました。

今回のDVDでも「ワンオペ育児」に「ブラック夫」、「森友学園・塚本幼稚園」に「わんずまざー保育園」、「キッザニア」から「シワシワネーム」、さらには「LINE外し」まで、育児に関わるネタが少なくありませんが、時事漫才への向き合い方など、変わったことはありましたか。

3児のパパになっても変わらないでいること&変わらざるを得ないこと

田中:漫才のネタに関しては、特にないかな。

――冒頭でも太田さんから、漫才を作ることは「ルーティンとして変わらない」というようなお話がありました。むしろ1988年の結成以来30年近くも「変わらない」でいることが、爆笑問題が爆笑問題たる所以(ゆえん)なのかもしれませんね。

田中:でも、まぁ……まったく何にも変わっていない、ということでもなくて。

僕ら、ラジオでトークをする時って、割と私生活みたいなことを話したりすることもあるんですけど。

最近は、全部ネットニュースになっちゃうから。気をつけなきゃいけないことが増えて、めんどくさいんですよ。

ほんっとにこれはイヤなんだけど、子どものことをラジオで話す時に、選んで話してます。これは話していいって思ったネタしか話せない。

昔だったら深夜のラジオでの話なんて「その場がおもしろければいいや」みたいなところがあったんだけど。でも今はそこで話した内容を、深夜の僕らのラジオなんて聞くはずもない人たちがネットのニュースで読んじゃう。しかも、中身の歪められたものを。

子どもをネタにした、なんでもないおもしろい話なのに、もし子どもが学校で「お前の親がこんなこと言っていた」みたいなことになったら、困りそうだなっていうんで、自分でブレーキをかけて話さないっていう話はあるんですよ。

――ネット社会の弊害、ですよね。パパとしては、守らなければならないものもありますものね。

田中:僕としては、そういうのを気にして話題を選ばなきゃならないのはすごく不本意なことなんだけど。まぁ、そういう場面はちょっと増えましたね。

――では本日のインタビューの締めとして、爆笑問題にとっての「お笑い」とは何か、聞かせていただけますか。実は私、タイタンの社歌『サンシャインデイズ』が大好きで。

太田:ああ、辻(仁成)さんの? うちの社歌が好きなんて、珍しい人だね(笑)

――『サンシャインデイズ』の中でタイタンの皆さんが「怖じ気づきそうなこの世界で苦しみを笑い飛ばせ」とか「笑えそうにないこの世界で悲しみを笑い飛ばせ」とか、歌っていますよね。

なんだか“混沌の中に見出す希望”というか、何があっても“懲りない”感じが、仕事や育児で毎日シッチャカメッチャカになっている自分に、元気をくれるんです。

それでお二人の「お笑い」の底流にも、そういうものがあるのかなぁと。

太田:そうねえ、うぅーん。

俺は、「お笑い」は人を殺しかねないと思っていて。

――エッ!? 人を、殺しかねないですか。