そして、同年10~12月、木村文乃は再び連ドラにレギュラー出演する。それが、榮倉奈々、菅野美穂、ARATA(=井浦新)、溝端淳平などと共演した、フジ系木曜10時の『蜜の味』だ。このドラマは、医師である叔父・雅人(ARATA)に憧れて医学の道を目指した直子(榮倉奈々)と、雅人の妻・彩(菅野美穂)、そしてそんな2人の女性の間で揺れ動く雅人という3人の泥沼の三角関係を描いた作品だった。木村文乃が演じていたのは、直子の医学部の同級生・陽華。中国からの留学生で、大学を主席で卒業する才女の役だった。ここでの木村文乃は、すごく存在感があった。叔父である雅人に思いを寄せる直子に、距離を置いたほうがいいとアドバイスをしながらも、のちに自分も不倫に走ってしまうという激しい役だったが、非常に魅力的だったのだ。中国からの留学生ということで、しゃべり方はややカタコトだったのだが、それを大袈裟にせず、絶妙のニュアンスでしゃべっていたところも良かった。とにかく、全体的なバランス感覚が見事で、女優としては、この作品で大きく評価を上げたと思う。脚本は大石静なので、陽華という女性のキャラクター自体が面白かったということもあった。でも、『功名が辻』の大石静に与えられたこの役を、木村文乃が丁寧に演じたことが、今の注目度につながっていることは確かだと思う。

こうして、今年の下半期からは、NHKの朝ドラ『梅ちゃん先生』に出演し、7月からは同時に民放の『黒の女教師』と『浪花少年探偵団』にも出演している。民放の2作品はどちらも教師の役で、NHKでは野島静子という看護師の役だ。とくに、『梅ちゃん先生』では、木村文乃の魅力が大きく発揮されていると思う。第18週では、仕事のことで竹夫(小出恵介)からきつく怒られた静子が、オフィスを出ていってしまうシーンがあった。そのあと、すぐに竹夫や梅子(堀北真希)の叔父である陽造(鶴見辰吾)に連れられて戻ってくるのだが、そこでの竹夫と静子のやり取りが最高だった。

竹夫「仕事に戻れよ」

なおもきつく言う竹夫に対して、静子はふてくされた表情。竹夫は仕方なく、

竹夫「すまん。きつく言い過ぎた。みんなに甘やかしてると思われたくなくて……」

静子、ニコッと微笑みながら、

静子「今晩、なにか美味しいもの食べたい」

竹夫「……わかった」

静子、さらに微笑みながら、

静子「すいませんでした」

もうツンデレ全開である。やっぱり、こういうちょっときつくて、可愛らしいところもある役はハマる。『黒の女教師』では、理想と現実のギャップに悩む新人教師、『浪花少年探偵団』では、女性としての裏表も使い分ける大人げない音楽教師をコメディタッチで演じているが、まだまだ引き出しは多そうだ。

おそらく、近いうちに木村文乃は連ドラの主演も射止めると思う。その時にどんなキャラクターで現れるのか、今から楽しみで仕方がない。


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トライストーン・エンタテイメント 木村文乃プロフィール [ http://www.tristone.co.jp/actors/kimura/ ]

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たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。