自分が1+1=3だと思ったら、3でいい

矢部昌暉 撮影:友野雄

――この作品のどんなところに魅力を感じましたか?

高校生の時期って、誰かの真似をしたり。人と一緒じゃなきゃ嫌だとか、はみ出すのが怖いと感じることがあると思うんですね。

でもジェイミーを見ていると、自分が思った方向へ進んでいいんだという気持ちになる。自分らしくいることの強さとか大切さを教えてくれる作品だと思いました。

――矢部さん自身は、人と一緒じゃなきゃ嫌だと感じたことはありましたか?

僕は逆にはみ出たかったんですよね。人と一緒があまり好きじゃない性格で。

よく取材の場で「目標の人は?」とか「憧れの人は?」という質問をもらうんですけど、そういう人もあえてつくらないようにしているんです。

――学生の頃は集団生活を強いられる中で、同調圧力を感じる場面もあったと思います。そういうものは気にならなかったですか?

はみ出すというと言葉が強いですけど。マイルドに言い換えると、みんながいくら1+1=2だと言おうが、僕は自分が1+1=3だと思ったら、3でいいと考えるタイプ。

そう信じて突き進むのはすごいエネルギーがいるんですけど、2だと曲げる方が僕にとってはよっぽど苦しいんですよね。

矢部昌暉 撮影:友野雄

――どうしてそんなふうに考えられるようになったんでしょう?

僕は小学5年生のときにこの世界に入って。小学校や中学校の頃は、周りに芸能の仕事をしている子もいなかったので、簡単なところで言うと、そういうところから自然とちょっと集団からはみ出ていたところがあったのかもしれないです。

仕事で遅刻や早退をすることが人一倍多かったので、意識せずともそういうふうになっていったというか。

――矢部さんは「普通」という言葉についてどう思いますか?

3月に発売した『X』というアルバムがあるんですけど、その中の『ニューノーマル』という曲を僕がプロデュースさせてもらったんですね。それがまさに「普通ってなんだ?」という曲で。

世間一般の普通って誰が決めたの? それを自分が普通と思えなかったら普通じゃないし、自分が普通と思ったことを相手が普通だと思わなくても、自分の中で普通なんだからそれでいい、人の真似なんてしなくていいということを歌っていて。

偶然なんですけど、『ジェイミー』が伝えたいメッセージとリンクしていて。今回の作品の中でいちばん共感できる部分でもあります。

悩んでいたときに、森崎ウィンくんがアドバイスをくれた

矢部昌暉 撮影:友野雄

――一方で、ディーンという役は、「普通ってなんだ?」と考える矢部さんとは真逆のキャラクターです。

そうなんです(笑)。でも思春期の頃って未知のものや新しいものを受け入れることがなかなかできなかったりもする。

そのあたりは、観ているみなさんもきっとちょっとは思い当たるところのある役なのかなという気がします。

――事務所の先輩である森崎ウィンさんをいじめる場面なんかもあります(笑)。

そこがドキドキですよね(笑)。ウィンくんは小5で事務所に入ったときからの先輩で。

僕はDISH//ではコーラスを担当しているんですけど、メインじゃない歌パートをやることに対して、自分のいる意味ってなんなんだろうなと悩んだ時期が昔あったんですよ。

そのときに相談した相手が、ウィンくんでした。

――そうだったんですか。森崎さんはなんと?

「サブのポジションなのかもしれないけど、コーラスにはコーラスの良さがある。なんならメインを引き立たせる縁の下の力持ちって大事な役回りだし、誰でもできることではないから誇りを持っていいんだよ」って。

その言葉がすごく心に残って。コーラスのことに限らず、そのときから縁の下の力持ちの大事さがわかるようになりました。

それ以来、そういう役回りを任されるのが好きになって。実は、自分に縁の下の力持ちという道を開いてくれた先輩がウィンくんなんです。

――めっちゃいいことを言ってくれていますね。

そうなんです。たぶんウィンくんは覚えていないと思いますけど(笑)。