10月14日発売のアップルの「iPhone 4S」

2011年10月は、携帯電話の月間販売台数の7割がスマートフォンだった。そのうち、ソフトバンクモバイルとKDDIの2社が販売するアップルの「iPhone 4S」が51.7%を占め、他の機種とはケタ違いの売れ行きを示した。今回はその「iPhone 4S」を中心に、10月の携帯電話全体、キャリア別の月間ランキングを紹介しよう。

●実質的なトップ3は「iPhone 4S」「Xperia acro」「iPhone 4」

まずは、キャリアを問わず、機種別にカウントした、通常の月間ランキングから見ていこう。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の10月の販売台数1位は、シェア6.83%でソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」の32GBモデルだった。以下、2位から6位までau、ソフトバンクの「iPhone 4S」が続き、前月1位だった「GALAXY S II SC-02C」は7位に、2位だった「iPhone 4」16GBモデルは9位にダウンした。

キャリア・容量ごとに別々にカウントしている6機種を合算すると、「iPhone 4S」の販売台数シェアは36.2%。スマートフォンに限ると51.7%にも達した。もちろんダントツのトップだ。

同様に、「iPhone 4」の32GB/16GBモデルと、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「Xperia acro SO-02C」「XPERIA acro IS11S」を同一機種とみなして合算すると、二番手は「XPERIA acro」で、三番手に「iPhone 4」が続いた。「XPERIA acro」は、NTTドコモの「Xperia acro SO-02C」だけではなく、9月20日にキャリアメールに対応したauの「XPERIA acro IS11S」が好調だったことが要因だろう。

●「iPhone 4S」は6.0ポイント差でソフトバンクモバイルに軍配

同じ「iPhone 4S」でも、ソフトバンクモバイル版とau版は、“別モノ”といえなくもない。それぞれのキャリアの通信方式の規格の違いから、下り/上りの最大通信速度や、利用できる機能が異なるからだ。またau版は、「iMessage」「FaceTime」と「ビジュアルボイスメール」に対応しておらず、すべての機能を活用することができない。実質負担額や料金プランにはそれほど差がないので、主に「つながりやすさ」「使い勝手」を中心に、ソフトバンクとau、どちらのほうがより快適に使えるのか、キャリアの比較に注目が集まっている。

キャリアごとにカウントすると、携帯電話全体で10月の販売台数1位はシェア19.2%で「iPhone 4S」SB版、2位はシェア17.0%で「iPhone 4S」au版となった。

「iPhone 4S」に限ったキャリア別シェアは、ソフトバンクモバイル53.0%、au47.0%。携帯電話全体ではなく、iPhone 4Sの総販売台数を母数にすると、一見、ソフトバンクが優勢のようにみえるが、販売台数の差はそれほど大きくなく、発売一月目は、ほぼ半々とみなしていいだろう。11月20日までの累計では、ソフトバンクモバイル56.0%に対し、auは44.0%と、10月末の時点より、差が広がっている。

●「iPhone騒動」とは無縁のドコモ、1位・2位は前月と変わらず

続けて、主要3キャリア、NTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイル(SoftBank)のキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、ここでは「iPhone 4S」「iPhone 4」はすべての容量を合算して1機種としてカウントしている。

今回の「iPhone 4S」騒動とは無縁だったドコモ。今年の夏モデルで人気を二分した「GALAXY S II SC-02C」「Xperia acro SO-02C」が1位・2位に入り、前月3位だった「Xperia ray SO-03C」が9位に、4位だった「F-12C」が8位にダウンした代わりに、「P-07B」「SH-11C」など、従来型の携帯電話が順位を上げている。11月に入り、スマートフォンの新モデルが順次発売されており、特に、LTEサービス「Xi(クロッシィ)」に対応した11月24日発売の「GALAXY S II LTE SC-03D」は上位に食い込みそうだ。

●auとソフトバンクモバイルは、「iPhone 4S」に人気集中、シェアは4割以上

新たにiPhoneを取り扱うことになったauは、「iPhone 4S」が45.9%という圧倒的にシェアで1位を獲得し、前月1位だった「XPERIA acro IS11S」は2位に後退した。また、従来型の携帯電話がトップ10中4機種と、再び増えている。

注目機種は、6位の「HTC EVO WiMAX ISW11HT」と9位の「HTC EVO 3D ISW12HT」。どちらも「+WiMAX」に対応し、月額525円でWiMAXによる高速データ通信を利用できるWiMAX対応スマートフォンだ。最新モデルの「HTC EVO 3D」は「iPhone 4S」の予約受付開始日と同じ10月7日発売で、ほとんど話題にならないという不運をかこったが、"スマートフォン好き”からの評価は高い。

一方、ソフトバンクモバイルは、9月のランキングに「iPhone 4S」が加わっただけで、あまり変動はなかった。1位の「iPhone 4S」のシェアはぶっちぎりの62.9%。前機種「iPhone 4」も18.2%を占め、この2機種だけで81.1%と、全体のおよそ8割を占めた。iPhone以外では、基本料無料キャンペーンを実施中の防犯ブザー付き携帯電話「みまもりケータイ SoftBank 005Z」が一番売れており、Android搭載スマートフォンは低調だ。

●iPhoneばかりが売れる状況を憂う声も

携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合は、2011年6月に初めて5割を超えたあと、7月~9月は50%台後半で推移。それが10月に突如跳ね上がって70%に達した(詳細は<スマートフォンが携帯電話の月間販売台数の7割に、「iPhone 4S」効果で占有率が上昇>を参照)。また、主要3キャリアのスマートフォンの割合を集計すると、NTTドコモは55.9%、auは68.2%、ソフトバンクモバイルは85.8%となり、約30ポイントの開きがあった。ドコモは、前月より9.4ポイント下がったが、auは、9月に比べ23.6ポイントもアップし、初めて5割を超えた。

過去1年間のスマートフォンのキャリア別販売台数シェアをみると、2010年11月まではソフトバンクがトップだったが、12月にドコモが抜き、トップに躍り出た。以降、今年6月まではドコモ・ソフトバンク・auの順だったが、7月に2位と3位が逆転した。10月は、シェア37.4%で10か月ぶりにソフトバンクモバイルが1位を奪還。auも前月の21.5%から36.1%に大幅にシェアを拡大し、ドコモは3番手に後退した。

メーカー別シェアではアップルが躍進し、2011年の年間No.1はシャープ、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズを押さえて、アップルが獲得する見込みが濃厚だ(詳細は<BCN、2011年の年間No.1メーカーを表彰する「BCN AWARD 2012」中間集計を発表>を参照)。「iPhone 4S」発売の影響は大きい。

電気通信事業者協会(TCA)が発表した10月の携帯電話の事業者別契約数によると、ソフトバンクモバイルは、19か月連続となる純増トップを保ったものの、純増数自体は前月から2万8100件減少した。対してauは、前月の純増数3位から2位に躍り出た。いくら発売直後とはいえ、iPhoneばかりが売れ、iPhoneの取り扱いを新たに開始したことで純増数までもが大きく伸びる状況が続くと、キャリア・メーカーの勢力図が塗り替わるかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます