■ファンが憧れた“漢(おとこ)”たちの生きざま

『あしたのジョー』(講談社漫画文庫)
高森 朝雄 (著)、ちば てつや (著)
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漫画キャラクターが現実に影響を与えたといえば、忘れてはならないのが名作『あしたのジョー』に登場したライバル・力石徹だ。1970年、無理な減量がたたり試合直後に死亡したエピソードを受け、講談社講堂で彼の葬儀が行なわれた。主催は寺山修司氏で、参加したファンはおよそ800人だったと言われる。本作の大ヒットによって日本でもボクシングが人気となり、さまざまな意味でリアルに影響を与えた漫画といえるだろう。

魅力的なライバルキャラの葬儀といえば、『北斗の拳』のラオウも昇魂式(しょうこんしき)なる催しが高野山にて開かれている。これは『あしたのジョー』とは違い、連載終了からずいぶん経ってのこと。2007年、映画『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』が公開されるにあたり、オフィシャルサイトで参加を呼びかけたものだ。あいにくの雨にも関わらず集まったファンは3000人! ラオウの圧倒的な存在感とカリスマは、199X年を過ぎた21世紀にも健在だった。ちなみに昇魂式の翌年には、『北斗の拳』生誕25周年イベントとしてケンシロウ&ユリアによる結魂式(けっこんしき)も開催。四半世紀が過ぎても褪せることない2人の結びつきを魅せてくれた。

『アカギ』 (近代麻雀コミックス)
福本 伸行(著)
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ファンが憧れるのはアスリートや武闘家だけではない。マージャン漫画『天』に登場した天才ギャンブラー、アカギ(赤木しげる)も崇拝者は多い。原作で主人公よりも目立ってしまい、スピンオフ作『アカギ』では全盛期の若い姿で主役に抜擢。こちらがアニメ化されたこともあって“スピンオフの方が知名度が高い”という奇妙な状況になっている。

そんな彼が『天』の最終巻で見事な死を遂げて10年後、2009年に竹書房の主催で「アカギ墓碑開眼・十周忌法要」が執り行われた。さらに13回忌となる3年後には「アカギ13年祭」も開催。リアルに墓碑まで作られるという、架空のキャラクターでありながら聖人のような扱いだ。まあ作中でのアカギの言動から想像するに、あの世で「くだらねえぜ……」などと愚痴っていそうだが。

こうしたイベントの背景には、権利者である企業が“ブランド価値の延命”を狙っているのではないかという俗っぽさが見え隠れするものの、作品のファンたちが互いに集まって交流することのできる貴重な場であることも事実。
――次の葬儀イベントはマミさんあたりだろうか。