■漫画が巻き起こしたブームといえば?

最後に、漫画のヒットがきっかけとなりマイナー(?)な分野が脚光を浴びた例をいくつか挙げたい。

『動物のお医者さん』 (白泉社文庫) 佐々木 倫子(著)
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まずは獣医志望の主人公を描いた傑作コメディ『動物のお医者さん』。作品のヒットによって、モデルとなった北海道大学で獣医学部の志望者が跳ね上がったという。そして、マスコットキャラクターといえるチョビの犬種・シベリアンハスキーの人気が急上昇。同時にシベリアンハスキーの捨て犬も増えてしまうなど、現実社会に明暗それぞれの影響を与えた。

近年では農学部を舞台にした『もやしもん』が大ヒットして、農学に興味をもつ若者が増えたとも聞く。また、昨年からは『鋼の錬金術師』の作者が少年サンデーで『銀の匙 Silver Spoon』を連載開始。こちらも農業高校を舞台とした話題作だけに、いずれ本格的な“農学ブーム”が到来するかもしれない。

すぐれた漫画は、伝統文化の再発見にも一役かっている。『ヒカルの碁』は日本のみならず翻訳版も人気を博し、若い世代を中心に囲碁ブームを巻き起こした。本作がきっかけでプロになった棋士もいるほどだ。競技かるたを扱った『ちはやふる』、書道を扱った『とめはねっ! 鈴里高校書道部』も同様に、漫画のヒットによって入門者が増えたという。

スポーツ分野では『キャプテン翼』が有名。この作品からサッカーに興味をもち、たくさんの一流プロ選手が誕生した。その知名度は海外にまで及び、ジダン、ロナウジーニョなど『キャプテン翼』ファンであることを公言する選手は多い。NAVERまとめサイトの記事などが詳しいので、気になる人はそちらも参照いただきたい。『スラムダンク(バスケットボール)』『アイシールド21(アメフト)』『タッチ(野球)』など、スポーツの競技人口アップに貢献したと言われる漫画はほかにも多い。

『テニスの王子様』(ジャンプコミックス) 許斐 剛(著)
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個人的に意外だったのは『テニスの王子様』の影響。審判そっちのけで超必殺技が飛び交い、ポイントを奪うより物理ダメージで相手選手をノックアウトするのが標準仕様となり“テニス”ではなく“テニヌ”とまで揶揄された同作だが、大手紙の調べによるとしっかり若者たちにテニスを根付かせる原動力となっているそうだ。おもしろければリアリティを捨てても読者を惹きつけられる、という良い例だろう。

こうしたブームは一過性で終わることもあるだろうが、少なくとも入門のハードルを下げることに漫画が貢献できている意味は大きいと思う。こんな影響の与え方であれば大歓迎だ。

 

 

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。

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