コミュニケーション障害……略して、"コミュ障"。人との会話が苦手、対面でどうしても緊張してしまう、こちらの気持ちを相手に伝えられない。人によって程度はあれど、対人関係で苦労している人は、このストレスフルな現代社会では多いことかと思います。

そんな人たちなら感情移入必至な"コミュ障キャラクター"を今回はご紹介します。漫画、アニメ、特撮など、各作品からピックアップするキャラクターは、いずれもコミュニケーションが苦手で、ちょっぴり生きづらそうな人たちばかり。

でも、そんな彼、彼女たちが頑張っている姿は、観る者に勇気を与えてくれます。共感とおかしみと、そして、元気を与えてくれるコミュ障キャラたちの奮闘を是非ともご覧ください。

『動物戦隊ジュウオウジャー』の門藤操(ジュウオウザワールド)

『動物戦隊ジュウオウジャー』は、東映のスーパー戦隊シリーズ第40作目のメモリアル作として放映された特撮ヒーロードラマ。異世界に暮らす"ジューマン"と呼ばれる獣人と人間が混合したチーム編成が特色で、王道の戦隊シリーズとしてのストーリーに加えて、異世界交流ものとしての側面も併せ持つ作風がファンを魅了しました。

ジュウオウジャーのメンバーは、皆、個性的なキャラクターの持ち主なのですが、その中でも飛び抜けて"濃い"パーソナリティの持ち主が、「ジュウオウザワールド」に変身する能力を持つ地球人の青年、門藤操です。

今作の敵組織である「デスガリアン」の洗脳を受け、当初は主人公たちの前に敵として立ち塞がることになる操ですが、ジュウオウジャーの活躍によって洗脳から開放され、共にデスガリアンと戦うことになります。

しかし、この門藤操、元々「子どもの頃から身体が弱く、友達がいなかった」という孤独な出自を持つ上に、複雑な経緯でヒーローになった為、自分に対する自信の無さと自罰意識の強さ、そして、コミュニケーション能力の低さから劇中で度々、面倒臭い行動を繰り返します。

ちょっとしたことがきっかけですぐに凹んでしまい、卑屈な言葉で自分を責めたり、戦闘中に塞ぎ込んで仲間の足を引っ張ったり……とてもヒーローとは思えないナイーヴ過ぎる言動を繰り広げるのです。

自虐的な性格で、他人との距離の図り方が不器用過ぎる彼に対して、仲間たちも褒めたり、励ましたり、なだめすかしたり、時には強い言葉で叱咤してみたりと、四苦八苦しつつも様々な形でコミュニケーションを取りながらサポートすることに。その中で、操も仲間たちとの絆を深めていき、大きく成長を遂げることになります。

彼の「成長物語」としての描写も『動物戦隊ジュウオウジャー』の大きな見どころです。とてつもなく面倒臭くて、でも、やっぱりカッコ良い、超個性派ヒーローのジュウオウザワールド。スーパー戦隊の歴史に残る名キャラクターです。

『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』の黒木智子

モテない女子……ネットスラングでいうところの「喪女」な女子高生の悲哀に塗れた日常を描く本作は、学生時代に"イケてない"青春を送った人間ならば共感すると同時に、胸に「ドズン」と重い痛みを残す作品です。

主人公の喪女、黒木智子は、捻くれた性格に加えて、やたらとプライドが高く、思い込みが激しい上にオタク的な趣味嗜好の持ち主……という、ティーンエイジャーのダークサイドを悪魔合体させたかのような、かなり屈折した人間性の持ち主として描かれています。

モテる、モテない以前に、そもそも他者とのコミュニケーション不全に陥っている為に、完全に周囲から孤立してしまっているのですが、前述のひねた性格と高慢さから、その事実を受け入れることができず、自身の性格や言動を省みるどころか無意識に周囲を見下してしまう始末。

劇中では、智子が薔薇色の高校生活を送るために自分なりの努力を重ねるのですが、その全てがコミュニケーション不全者特有の客観性のなさから、痛々しい空回りに終わってしまう様がコメディとして描かれます。

とにかく読んでいて辛い場面の連続なのですが、一方で、徹底的に自虐的な笑いを貫くコメディセンスの高さや、心理描写の上手さとそこからオチへと繋げる構成力の巧さ、「不気味」と「可愛い」の間で絶妙なバランスが取られた智子のキャラクターデザインなど、ギャグ漫画として多くの見どころがあり、キチンと「笑える」一冊になっています。

悲惨さと滑稽さがせめぎ合うドラマ性こそが本作における最大の魅力でしょう。ちょっと毒のある笑いを求めている方に、オススメできる漫画です。