「完母だから赤ちゃんを預けられない」と思っていませんか?「ママが倒れないためにも“人の手”を借りて」と語るのは【母乳110番】代表で母乳育児書のロングセラー『おっぱいとだっこ』等の著者・竹中恭子さん。気持ちよく赤ちゃんを預ける秘訣を聞きました。

完母ママの選択肢は「公共の場で授乳するか」or「家に閉じこもるか」の二択ではない

――「公共の場での授乳」に悩んでいるママの多くは、いわゆる“完母”のママたちです。

赤ちゃんの栄養が母乳のみであることから、パパや、おばあちゃまおじいちゃまに預けることも、また一時保育を利用することも難しく……周りから「ママの勝手な主義主張でミルクを飲ませていないんだから、責任持って自分ですべて面倒見なさい」なんて突き放され、八方塞がりに感じることも。

竹中さんは【母乳110番】代表として「ママが倒れないためにも“人の手”を借りる」ことを勧めておられますが、母乳をあげるママに代われる人がいるとも思えず、どんな風に“人の手”を借りたらいいのか、いまひとつイメージできないのですが。

竹中恭子さん(以下、竹中):今日は【母乳110番】として25年余り、ママたちの相談に乗ってきた相談員の立場からお話させていただきますね。

まず、完母で育てていることが「ママの勝手な主義主張」ではないことは、今回の「専門家と考える 公共の場での授乳問題」特集に登場される、ほかのお医者様のインタビューにご説明を委ねるとして(※1)

「公共の場での授乳問題」はその名の通り、公共の場で授乳をするママに良くも悪くも注目が集まっているわけですが、母乳育児であれば「不規則授乳」が基本ですから、お出かけ時に公共の場で授乳せざるを得ないこともあります。

その必要性を社会に理解してもらうことが、問題解決への第一歩です。これは確かです。

でも実は、完母ママには「公共の場で授乳するか」「家に閉じこもっているか」の二択ではなく、論争の渦中で見落とされがちなのですが“人の手”を借りて「赤ちゃんを預けて出かける」という選択肢もあるんですよ。

――エッ!完母の赤ちゃんを預けて、ママがひとりでお出かけをする、ということですか?

竹中:もちろん公共の場での授乳があたたかく見守ってもらえるような社会になったら、ママと赤ちゃんにとっては一番ですよね。でも、それはともかくとして。

赤ちゃん連れで出かけるのはまだ慣れないというママだっているでしょうし、それに……

ママがひとりで出かけなきゃならない時や、出かけたい時だってあるでしょ?(笑)

ワンオペ育児はどうして危険?ママの心と身体を“長持ち”させるには

竹中:現実的なお話をすれば「この子は母乳だから預けられない」「少しでも離れるなんて赤ちゃんに申し訳ない」と自分を責めてしまうようなママは……ピンと張った糸のような状態です。

疲れを貯め過ぎて、プッツンと切れてしまう危険があります。

――恥ずかしながら自分にも、切れそうになったこと、あります・・・

竹中:あら、恥ずかしいことなんて、ちーっともないのですよ。

まずママに、そしてパパに、さらにご家族や周りの方によくよくご理解いただきたいのは、ママ以外の人たちの手助けで赤ちゃんの関心をママではないものに向ける、言うなれば赤ちゃんを「ごまかす」時間は、ママの心身の糸を緩め“長持ち”させてくれる役割がある、と思ってください。

ワンオペ育児はそれがないので、孤独なママが追い詰められてしまうのです。

ママの外出がワガママでないことは【母乳110番】顧問の産婦人科専門医・村上麻里先生もインタビュー(※2)で答えておられますし、

私からも「魔法の合言葉」のインタビュー(※3)の際に、結局使えるのは完璧な施設ではなく“人の手”で、赤ちゃんを「ごまかす」のがキーワードというお話をしましたが、

例えば真面目なママが罪悪感を抱きがちな「一時保育」を利用する時にも、同じ考え方をしてほしいのですね。

※1 ハピママ*記事:ミルクではなく「母乳」をあげる必要ってある?医学から読み解く母子&社会【特集:公共の場での授乳問題(11)】

※2 ハピママ*記事:「ママだって出かけたい」はワガママ?授乳期のお出かけは控えたほうが良いのか、産婦人科医に聞いた【特集:公共の場での授乳問題(7)】

※3 ハピママ*記事:【母乳110番の現場から】完母ママだって外出OK!悩めるママに送る「魔法の合言葉」【特集:公共の場での授乳問題(10)】