――重いお話だけでなく、心が和らぐようなシーンもありますよね。

花澤:描かれるテーマ自体がすごく重たいもので、過去自分が通ってきた道だったり「この時こうすればよかった」とか、いろいろなことが思い出されるんですけど、ひなたちゃんを見ていると「もっとやれ!がんばれ!」っていう気持ちにさせてくれるんです。

一緒に涙を流してくれる方もいらっしゃると思いますが、ひなたを支えてくれる登場人物もたくさん居ます。ですので、見る前から身構えたり心配しなくても大丈夫です。

羽海野先生の作品なので、ところどころにクスっとしてしまうシーンもたくさんあるので、いろいろあるけれど、変わらず見て頂ければと!

©羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

――川本家の食卓は相変わらず楽しそうです。

花澤:あの温かい感じは変わらず、猫もしゃべりまくっています(笑)

花澤さんが考える「成長するということ」

――第1シリーズのラストで、零が「自分が変わったわけでも周りが変わったわけでもない。同じ光が差す方に進んで旅をしているんだ」と気づくシーンが、彼にとっての成長だったのだと思っています。

ひなたを演じている役どころ、そして声優さんというお仕事を通じて、花澤さんにとって「成長する」とはどういうことなのか、お聞かせください。

花澤:私のお仕事においては、アフレコ現場ごとに「気づき」があるんです。

撮影:市村岬

気づかないと出来ないこともたくさんあって、それは日常生活にも通じると思っています。

ちっちゃい頃はわからなかったけど、今ならわかる気持ちもあって、どんどん見える景色が変わっていくんだろうなと。どれだけいろんなことに気づけるのかが、成長につながるのかなと思います。

――「気づき」を得るために、事前に役を作り込むなど、現場に入るうえで大事になさっていることはありますか?

花澤:むしろ頭を柔らかくしていた方がいいなと思います。あまり家で練習しすぎて固めすぎないように意識しています。

シーンの状況やセリフの意味などは考えて行くのですが、こういう風に言おうとかはあまり考えないで、一緒に演じている人のお芝居とか、本番で感じたように演じられればと思っています。

『3月のライオン』の現場、とくに川本家のシーンではみんないい意味で気が抜けているので、こういう風に行こうって決めていると、会話が成り立たなかったりすると思うんです。

――ありがとうございました!

日々の生活を営む中、『3月のライオン』という作品を観ることで気付ける大切な何か――。TVアニメ『3月のライオン』第2シリーズは、毎週土曜23:00よりNHK総合にて放送。

アニメ誌・ゲーム誌の編集を歴任し、現在はWEBメディアのディレクターなどを務める編集ライター。アニメや映画取材をはじめ、日本全国津々浦々、お祭りや秘境取材などもする突撃派です。