――もうちょっと分かりやすくしたほうが間口が広くなるじゃないですけど、そういう意図ががあっての試みなんでしょうか。

手鞠:メンバー的には、多分そういう意図もあると思います。僕はメンバーがそう言ったら、単純に「あぁじゃあ試してみるか」っていうだけであって、僕個人は間口を広げる広げないはあんまり意識してないですね。むしろ僕の能力の可能性を広げてくれるチャンスだと思っています。

特にkaname君はリーダーじゃないんですけど、彼がアイディアマンとして引っ張る形のバンドなので、色々そういう面白い提案をしてくれるんですよ。でも僕はもう全然そういう感覚がないというか、単純に自分が純粋に思う言葉であったり作品だったりを作りたい人間なので…。

だからもうメンバーが「こうして、ああして」って言うのと自分がやりたいことのディスカッション…戦いというかぶつかり合いだったりとかするので。基本的には僕はそんなに意識しないですね。

広めても狭めても、もうamber grisを始めた時点で僕は狭めてると思うので(笑)。最初からそういうつもりでやってるというか、更に言ってしまえばヴィジュアル系をやっている時点でもう狭めてると思うし。

――それはもう極論ですけどひとつの正論だと思います(笑)。

手鞠:ヴィジュアル系に関わらず、何をやってても好き嫌いって絶対あるんですよ、本にしてもゲームにしてもテレビにしても芸人さんにしても他のアーティストさんにしても。もう何かを選んだ時点で何かは切り捨ててると思うんです。

どうしてもこの世界は、ビジネスの世界なので色々金銭的に関わってくる部分とか絶対あるんですけれども、純粋に音楽をみんながそれぞれ表現者としてぶつけ合って高め合える状況に行きたいなっていうのはあって。その中でもっともっと自分を磨いていい作品を作っていける環境であればいいなと思っているので。

amber grisを始めるに至って割り切ったというか突き抜けちゃった部分はあるので、少なくとも僕もう結構無敵なんですよ、前にやっていたバンドが終わった時に、なにか吹っ切れてしまったので。「自分がやらなきゃ」っていう呪いがとけたというか、解放されたというか、バンドなんだから皆でやればいい。補い合えばいい。無敵というか今の状況を純粋に楽しむ感覚にシフトしているので。

嫌な言い方をすると「大人になった」ということだと思うんです。昔は何にでも食って掛かってたんですけど、何かに対して割り切れるようになったというか。それって結果的に無作為に過剰なまでに全方位に向けていたアンテナの一部が死んだということなので。その感覚は復活しないと思いますし。

――同世代のミュージシャンって手鞠さんが好きだという方、例えばMEJIBRAYの綴さんはamber grisを好きだと公言されていますよね。

手鞠:ありがたいですし、大変恐縮です。

 

前回のシングル「this cloudy」のMV

――それは手鞠さんにポリシーがあるから皆さんリスペクトしたりとかフェイバリットにあげているのかなって思うんですけども。

手鞠:うーん、どうなんですかね。さほど自覚は無いんです。自分では全然分からないというか、信じた事をクソ真面目に積み重ねてきただけで。今まで具体的な結果を出して来た人間ではありませんし、ただ一生懸命やってきたものを見てくれてる人がいたっていうのが如実に伝わったというか。

例えばファンの方に「今も好きだし前のバンドの時から好きでした」とかっていうお手紙とかもいただけるんですけれども、直接ではないですしあくまで「リスナーの人たちの観点」っていう感じじゃないですか。なので僕の中ではあまり現実味がないんですよ、仮にインストアイベントとかで直接言われたとしても。

だけど同じように音楽をやってステージに立っている人間から「好きだったんですよね」って言われるのは、何よりも実感があって…。こういう言い方をすると、応援してくれてる人たちに申し訳ないですけど(笑)。わからないんですよ本当に。応援してくれてる人たちがどれくらいいるのかって実感が今の僕にはなくて。

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