本当はみんな“オーガニック”が好き!
――ホワイトハウスの庭にはオーガニック農園があるんですね! 映画を観て初めて知りました。
「皮肉なことだよ。大統領夫人は小さな有機農園を持ってる。その一方で、大統領はGMOを推進してる、世界全体にね(笑)」
――オーガニックの方が体にいい、ということがわかってるわけですよね?
「ま、そうだよね(笑)。子どもには有機野菜を食べさせているだろうね」
――GMOを作らなくても、「実はオーガニック作物だけで世界を幸せにできる」(※)ことも、きっと彼らは知っているんでしょうね?
(※人々は「オーガニック作物だけでは世界の貧困を救えない」と思い込まされている)
「だろうね。彼らは十分な知識を持っているしね。それから、GMOに関する規制の撤廃を押し進めているUSDA(米国農務省)も、建物の前に『小さな有機農園』を持ってる(笑)。
…なんだろう、この状況をうまく何かにたとえたいんだけど。…日本語で何かいい『ことわざ』はないかな?」
(監督、それからしばしの間、「羊の皮をかぶった狼?」「巨大な石炭発電所にソーラーパネルが設置されてるようなもの?」などと、いろいろなたとえを考える)
日本にも差し迫る課題“TPP”は”トイレットペーパー”!?
日本でも今後、TPPの影響で“遺伝子組み換え”の表示がされなくなる恐れがある。GMOだけではない。農薬や食品添加物、放射線照射などに対する規制も、大幅に緩和される可能性がある。
――日本人として、何かできることはあるのでしょうか?
「世界中の人と手をとり合って、TPP反対の声を上げるべきだと思う。TPPなんて、今まで何十年にも渡って行われてきたことの繰り返しだよ(※)。一部の企業にますます権力が集中して、すべてのルールが決められてしまうんだ」
(※一部の国際的大企業にとって不都合な規制を撤廃し、障壁を取り払うことで、権力のある場所にのみ利益が還元され、貧しい国にさらなる貧困を生むこと)
「明らかなのは、人の健康は優先されない、ってことだよ。…知ってる? “TPP”ってトイレットペーパーの略なんだ(笑)。おしりを拭いて、トイレに流して捨てるべきものだよ。トイレットペーパーほどの価値もない。だって実際、人間をまるでゴミみたいに扱ってるんだからね。
腹立たしいのは、GMO推進派は、すぐに“科学”って言葉を持ち出すことだ。『科学的に見て安全だ』とか『科学的にみて今までの食べ物よりいい』とかね(※GMOが人に及ぼす影響の安全性についての調査は実際には存在しない)。それによってますますGMOが広がっていくことになるんだ」
“GMOがいいとか悪いとか、そういう問題じゃない”
――GMOについて知れば知るほど、どうにもできない閉塞感に襲われてしまいますが…。でも、この映画は「自分も何かできる」「希望はある」という気持ちにさせてくれますね。
「自分も初めは絶望的な気分になった。だけど、子どもたちが違ったものの見方をさせてくれた。フィンは種が好きなんだけど、それは種や生物が純粋な美しさや不思議さをもっているからだと思う。
この映画は、そうした僕自身の気づきを反映してる。最終的には『怒りや憎しみ』より、『愛情』のほうが、より人を動かすパワフルな力になると思うんだ」
監督の長男・フィン君(当時6歳)は、“種”のカタログを見て言葉を覚えたというほど、植物の種が大好き。種を拾い、植物を育てることは、フィン君にとっても、また地球上のすべての人にとっても、ごく自然で当たり前のこと。しかし、その“種”が一部の企業によって支配され、世界中の食べ物がGMOになってしまったら…?
監督は映画の中で、こんなメッセージを伝えている。
「GMOを買うなと言ってるわけじゃない。
GMOがいいとか悪いとか、そういう問題じゃないんだ。
『人類にとって、本当にいいことはなんだろう?』ってことなんだ」
“世界を救う”という名目で知らないうちに世界中に広まり、誰もが毎日いろいろな形で口にしていながら、食べているという実感がまったく湧かない、不思議な作物“GMO”。
GMOは世界を救えるのか? 映画を観れば一目瞭然だ。
この春、セイファート監督の家族といっしょに、“GMO”をめぐるディープな旅へ出かけてみては?
■『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』
4月25日より渋谷アップリンク他、全国順次公開
監督: ジェレミー・セイファート
出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリー二、ヴァンダナ・シヴァ、
配給・宣伝:アップリンク、字幕:藤本エリ、字幕協力:国際有機農業映画祭
(2013年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/85分/カラー/アメリカ、ハイチ、ノルウェー)