通算93作目となるNHKの朝ドラ『あさが来た』。2015年9月28日のスタートから、前半戦の区切りとなる12月26日まで、13週連続して週間平均視聴率が20%の大台を突破するなど、好調をキープしている(ビデオリサーチ社調べ・関東地区)。

はたして『あさが来た』が多くの視聴者を惹きつける魅力は何なのか。そして2016年1月4日からリスタートしている後半戦は、いったいどんな展開になるのか。ここでちょっと探ってみよう。

フィクションの世界に素直に入り込めた『あさが来た』

NHKの朝ドラは、2013年上半期の『あまちゃん』以降、6作連続して初回視聴率が20%を越えていて、何度目かのブームを迎えている。平均視聴率は、前作の『まれ』が後半失速してしまったため、20%超えの連続記録は5で止まったが、現在放送中の『あさが来た』では、また毎週20%以上をキープしている。

そんな好調の『あさが来た』だが、始まる前に不安要素がなかったわけではなかった。
朝ドラ史上、初めて時代設定が幕末スタートになること。ヒロインにはモデルがいるが、それほどよく知られている人物ではなかったこと。原案になる本が小説で、ドラマではさらに脚色を加えてフィクションにすること、などが不安といえば不安だった。

ところが、始まってみると、これらの要素はすべて良い方向に作用していた。
ヒロインのモデルとなっている広岡浅子の実家は名家で裕福(のちに財閥となる三井家)、嫁ぎ先も大阪の豪商だったので、幕末時代がスタートといっても、決して泥臭い雰囲気はなく、スマートで見やすい滑り出しだった。

史実にとらわれないという選択

史実としては、広岡浅子が16歳の頃に「禁門の変」が起こり、京都では2万戸以上が焼失。戦闘の中心となった蛤御門は浅子の実家から徒歩10分くらいの場所にあったので、結婚直前の浅子にはかなり大きな出来事だったに違いない。また、当時はそれほど珍しくなかったとはいえ、浅子は正室の子供ではなかったので、2歳で三井家当主の養女になるという幼少時代も送っている。

ただ、ドラマではそういったエピソードには触れず、ヒロインはひたすら好奇心旺盛な明るいおてんば娘として描かれた。こうした脚色が視聴者に素直に受け入れられたのは、モデルとなった広岡浅子のことが、これまであまり知られていなかったからじゃないだろうか。

東京や九州へ行く時期、炭鉱への関わり方などもドラマと史実はずいぶん違うが、そんな脚色も一般的には素直に受け入れられた。モデルとなる人物がいるにもかかわらず、最初からフィクションの世界に迷わず入り込めたのが、『あさが来た』というドラマだった。

“好奇心旺盛なおてんば娘”というキャラクターも、現代劇ではしばしばウザいヒロインとして嫌われてしまうことがある。でも、時代背景が幕末から明治にかけてなので、このヒロインの破天荒なキャラは、一定のところでブレーキがかかった。そんなところも見やすい要因のひとつだったといえる。