理解できないというコンプレックスがあるとディスりたくなる

『わたしはあの子と絶対ちがうの』 とあるアラ子

——音楽の知識がないアラ子さんが、彼らをディスりたくてたまらなくなるシーンも、共感する人は多そうです。

と:ここまでくるともう病気ですよね。自分が理解できないものを楽しんでいる人たちの中にいると、コンプレックスを刺激されますから。楽しそうな人は羨ましいですからね。

私、DJイベントがすごい苦痛なんです。大きな音で音楽を流して「イェーイ!」って感じで、ろくに会話もできないことの楽しさが分からず。もしかすると、自意識が邪魔して楽しめないのかもしれません。

自分が理解できないというコンプレックスがあると、どうしてもディスりたくなってしまいますよね。楽しそうな人達の輪に入れない悲しい気持ちを無理やり正当化しようとしちゃうんですよね。

そこまで自分で分析できていても、気を抜くとすぐDJイベントをどうにか揶揄できないか考えてしまうんですよ。怖いですよね。今も、DJディスをしないよう、日々気をつけています。

SNSには自分を良く見せようとする自意識を感じられる

——この作品にはSNSによる人付き合いのモヤモヤ感が多く登場しますが、アラ子さん自身はSNSが好きですか?

と:好きですね。漫画の中の「アラ子」はSNSにすごく依存していますが、私自身も依存していますね。そのへんはあまり脚色していないです。

でも、世間のSNS好きの人と違うと思うのは、私はSNSに文章を投稿することにはそこまで興味はないんです。

とにかく他人の投稿を読むのが好きなんです。隅から隅まで読んで、写真は拡大して見たり。友達がかわいい猫の画像をアップしても、猫は全く見ないで、背景に写る本棚とか、家具から間取りを想像したりしています。気持ち悪いですよね……。

そして、好きな友達よりも、ちょっと苦手だなと思っている知り合いの投稿をわざわざ見に行ってしまうんですよね。料理の写真だけならば何も思わないのですが、「食いしん坊だから毎日料理しちゃう」なんてテキストが書かれていると、そこに自意識を感じてイラッとしてしまうんですよ。

「食いしん坊」という一見自虐的な言葉をわざわざ使っているけど、料理が好きなことをアピールしたいだけなんじゃないの? みたいな。すっごい性格が悪い見方ですけど……。

以前テレビで、女性の8割が女友達のSNSを見てイラッとしていると言ってたんですよ。8割はさすがに多過ぎだし、男の人もそういう感情があるとは思いますが、多かれ少なかれ、そのような感情を持っている人はけっこういるんじゃないですかねぇ?

でも、他人の自意識って感じるとイライラするけど、同時に安心もするんですよね。「人に良く見られたい」と思っているのは自分だけではないんだなと。

 ——でも女性って、自分にとって良いことしか投稿をしない傾向があるように思いますが……

 と:そこを、ちょっとした言葉のニュアンスから探し出しちゃうんです。こないだまで彼氏の影があったのに、別れちゃったのかな? みたいな。

でもこういうネットウォッチって、身近な人にしかしないんですよね。芸能人だと興味がなくて。SNSはリアルの会話よりも、その人が隠していることや隠したいことが見える瞬間って、そこに真実がある気がしてしまうんです。

 ——何気ない投稿も、他人からはしっかり裏の裏まで見られているんですね。私も気を付けよう……。