空気が読めない… 左脳化自閉化する現代人

「テクノロジーを使うとなんでも早くできるし、文字も手書きするよりきれいなのですが、便利になると脳を使わない、ということに誰も気づかなかった。
脳を使わない分、どこかで使わないといけないのですが、やっぱり他でも便利なものを使って、結局、脳を使わない。

右脳の頭頂部、頭の後ろにある部分は、言葉では刺激されない部分なので、普段使っているのかどうか、わかりにくい場所なんですが、ここが弱まると“勘(カン)”が働かなくなる。自分で感じないとダメな場所なんです。目で見て、自覚する場所なんですね。
ここを使わないと、目で見た情報がまったく脳に入ってこない。自分の目で確認し、理解する、ということが著しく減ってくる。つまり、体験が希薄になるんです。経験していたとしても、“希薄”になる。

脳は、見たものを理解したり、記憶したり、情報が脳の中で動くことで活動し、成長するのですが、ただ“見るだけ”だと、そこから先に情報が伝わっていかない。
「ああそうなんだ」、で終わり。四角いものは『四角いものなんだー』、丸いものは『丸いものなんだー』…で、終わりなんです(笑)。

そうすると、人の顔を見て『あの人は今日疲れている気がするから、こうしてあげよう』とはならない。当然空気が読めないし、配慮ができない。見てもわからないから、『大丈夫ですか』、と言えない。見ればわかるでしょ、というのはありえない。言葉で説明してあげないと、わからない人間になっていきます。

その分、人とコミュニケーションがとりにくい。いびつな脳が加速して、より左脳化し、自閉化しているのが現代人ですね」

脳は「刺激」「変化」「楽しい」が大好き!

ここまで読んで、「思い当たるフシがある」、「少し心配になってきた」という方。
大丈夫です。放っておくと認知症街道まっしぐら…になりかねませんが、脳は何歳からでも良い方向に変えられるそうです。
脳をバランスよく使う(=脳コンディショニングする)ことで、「健康」な状態に戻せるのです。

「タンスの中のいらないものを捨てたり、冷蔵庫の中を整理したり。そういったことは、じつはすごく、使っていない脳を使うことになるんです。整理・整頓っていうのは、目で見ないとできないじゃないですか。なんでいらないのか、自分で考えることになりますよね。それが、右脳の後ろの部分を使うことになるんです。

例えば料理の手順を変えてみたり、レシピを見ずに目分量でやってみたり、ラジオを聞きながらやったり、包丁を反対の手で持つとか(※ケガに注意)。
家事をいつもとは違う方法でやることで、普段使わない脳を使い、新しい発見があったりもします。

生活習慣の中で楽しみを作る、ということですね。家事や食べることは、絶対に避けて通れない。それを簡便に済ますのか、丁寧に共有して過ごすのか、そのへんのところでも大きく違ってきます。そこを簡略化してしまうと、人と交流するチャンスもなくなり、自分が育つチャンスもどんどん少なくなる。

食事の内容も、いつもと違ったものにすることで、違った感想が浮かんできますよね。同じサーモンでも、種類によって色が違ったりしますし。
変化があることによって脳が刺激されるので、いろんな変化を起こすことが大事です。

脳って、つまらないときには、フリーズして動かない。柔軟な、楽しい気持ちのときに働きやすいので、楽しくなるように考えれば、うまくいくと思います」

日常生活の中で、ちょっとした変化を積み重ねることが大事、ということでしょうか。

さて、それでは現在、仕事をしている人の場合はどうなのでしょう。
毎日バリバリ、頭をフルに使っているから、脳はいたって健康?

引き続き、加藤先生にお伺いしてみたいと思います。

続編:「子どもに怒ってしまうのは“頭が悪い”状態!? 働くママの脳のお手入れ法」

ライター/女子栄養大学 食生活指導士1級。学生時代からさまざまな体調不良に悩まされたこともあり、健康的な生活習慣について学び始める。現在は専門家を中心に取材活動を行い、おもに食、健康、美容、子育てをテーマにした記事を発信。乗りもの好きな1男の母でもある。