牛たんポテトサラダ

新橋界隈の居酒屋ではポテトサラダをメニューに掲げている店が多いはず。松永さんの店にもあるのだが、ちょっと変わったポテトサラダを定番にしている。

「出汁で8時間炊いた牛たんを、冷やしてから、刻みます。これをジャガイモやキュウリ、ゴボウと和えたものが、うちの『牛たんポテトサラダ』です」

細かく刻んだ牛たん、シャキシャキ感のあるキュウリ、コリコリしたゴボウ。食感を愉しめる「牛たんポテトサラダ」は480円。

ところで。バルでありながら、酒の説明をあえてしなかった。それには理由がある。この店では、お通し代として580円を払うシステムを採用している。

「お通しが580円もするのか!」と眉間にシワをよせる人もいるかもしれない。が、ちょっと待ってほしい。「料理の、ひとり三国同盟シェフ」の松永さんは、手の込んだお通しを用意している。今の時期は大根と野菜を炊いたものと、ニンニク肉味噌を出している。

炒めたニンニクにひき肉を入れ、出汁で炊いたニンニク肉味噌を、コトコトと炊いた大根につけて食べてもらう一品だ。クーラーで冷えた五臓六腑を、温かい大根が癒やしてくれる。

お通し

「うちでは、手作りのお通しを食べていただきながら、ワインもシャンパンも日本酒も原価で提供しています。そのためのお通し代として、580円を頂戴しているんです」

酒の原価販売を実現させるために580円を支払ってもらっているというのだ。

その見返りに、どんな酒を原価で飲めるのか。

たとえば、「久保田の千寿特別本醸造」は一合で330円。「モエ・ブリュット・インペリアル」は1本4789円で提供している。

「冷蔵庫にはメニューに載っていない酒もあります。常連客の中にはメニューを見ず、今日のおすすめを聞いてくる方もいらっしゃいます」

特製ガチ割りレモンサワー

かと思えば、オリジナルドリンクも揃っている。その中でもっとも人気なのが、凍らせたスライスレモンが入った「特製ガチ割りレモンサワー」(580円)だ。

氷を使っていないので、最後まで味が薄くならない。それどころか時間が経つとより冷たくなり、レモンの味が濃くなってくる。ホッピーではないが、2杯分が入った中だけを別途注文すれば、安く飲めるというわけだ。

焼くだけでもなく、フレンチでもイタリアンでもない牛たん料理。「料理の、ひとり三国同盟シェフ」が牛たんをどう昇華させるのか、ちょっと見ものだ。

新橋炭焼き牛タン本舗
東京都港区新橋3-14-6駒場ビル1F
03-3433-8103
11:30〜LO14:00/16:00〜LO23:00(日祝LO22:00)
無休

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。