フジテレビの月曜9時枠で放送されるドラマを、月9(ゲツク)と呼ぶようになったのは、いつ頃からだろうか……。一般的には、1988年1月にスタートした『君の瞳をタイホする!』からだと思う。それ以前にもドラマは放送されていたが、主に恋愛をテーマに描き、トレンディな切り口のドラマになったのは、この作品が最初だからだ。

現在放送中の『私が恋愛できない理由』も、そんな月9の王道。さまざまな理由で恋愛に積極的になれない現代の女性たちを主人公に、彼女たちがもがきながらも幸せを求めていく姿が描かれている。『君の瞳をタイホする!』から数えると、96本目の月9だ。

メインキャストは、香里奈、吉高由里子、大島優子の3人。これに稲森いずみや倉科カナ、剛力彩芽などが絡む形で話は進んでいる。男性陣は、田中圭、萩原聖人、中村竜がスタート時の恋愛対象で、3話からは小柳友、平岡祐太、EXILEのKEIJIなども登場している。
ちなみに中村竜というのは、1996年から2005年まで、連ドラとスペシャルで放送が続いた名作『白線流し』で慎司役をやっていた人。プロサーファーになってからはあまり活発な芸能活動をしていなかったが、前作の朝ドラ『おひさま』でも久々に元気な姿を見せていた。嬉しいなあ、こういう人が出てきてくれると……。

いや、今回は中村竜の話ではない。大島優子だ。秋元康が「AKB48とは、大島優子の一生懸命さのことである」と言った、あの大島優子だ。

   
 

 



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彼女がAKBに入る前から芸能活動をしていたことは、今やかなり知られていると思う。子役から活動していて、月9の出演は今回でなんと4度目になる。

一番有名なのは、2001年10~12月期に放送された『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』だろう。洋菓子店「アンティーク」を舞台にしたハートフルなドラマで、滝沢秀明、椎名桔平、藤木直人、阿部寛などが出演していた。大島優子は病気で入院している大林加世子という役で、当時13歳。病院で星のケーキを欲しがる加世子が、最後は本当に星になってしまうというストーリーの第4話は、全11話の中でもかなり泣ける内容だ。

13歳の大島優子が可愛いのは言うまでもないが、改めて見ると演技もかなりうまい。とくに、なぜ星のケーキが欲しいのかを、口に出しては言わない病室での表情などは見応えがある。当時から大島優子は一生懸命だったのだ。

   

 

 

 

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その後、2005年10~12月期に放送された『危険なアネキ』にも大島優子は出演している。キャバクラ嬢役の伊東美咲と研修医役の森山未来が姉弟役を演じたドラマで、他に高嶋政伸(医師)、釈由美子(看護師)、榮倉奈々(薬剤師)、平岡祐太(研修医)などが出ていた。

大島優子は第3話にちょっとだけ出てくる榮倉奈々の同僚役で、当時17歳。時期としては、彼女が第二期AKB追加メンバーオーディションに合格する4ヶ月くらい前になる。セリフは4つ程度。看護師役の釈由美子がキャバクラでバイトしていることが発覚し、そのウワサ話を榮倉奈々も含めた4人の同僚で会話するシーンだ。顔のアップはないが、キャストロールで大島優子の名前は表示されている。

   

 




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そして、大島優子が月9に初めて登場したのは、この2作品よりもさらに前、1997年1~3月期に放送された『バージンロード』だ。和久井映見、反町隆史、武田鉄矢、宝生舞、寺脇康文などが出ていて、未婚の母になることを決意した主人公の和美(和久井映見)が、運命的な出会いをした薫(反町隆史)と結ばれるまでを描いた作品だった。

大島優子は幼少期の和美役で、当時8歳。和美の父親・光(武田鉄矢)が自宅で写真館を経営しているという設定だったので、ドラマ内でも家族写真が頻繁に登場した。その写真に写っている子供時代の和美が大島優子だ。残念ながらキャストロールに名前はなく、当時所属していた「セントラル子供タレント」の表示が第1話で確認できる。

   

 




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ちなみに、このドラマの主題歌は安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」だった。タイトルバックに安室奈美恵と小室哲哉が登場するという斬新なプロモーションも行なわれ、今でも結婚式でよく歌われる安室奈美恵のナンバー1ヒットソングになった。で、今期の月9『私が恋愛できない理由』でも、主題歌を歌っているのは安室奈美恵である。「Love Story」という曲で、安室奈美恵が月9の主題歌を歌うのは『バージンロード』以来、14年9カ月ぶりとなる。

奇しくも『私が結婚できない理由』には、『バージンロード』の主演・和久井映見の元ダンナさんである萩原聖人や、『危険なアネキ』で研修医だった平岡祐太も出演している。大島優子にとっては何かの縁か……。他にも、『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』で共演した椎名桔平は火曜9時枠の『謎解きはディナーのあとで』に、『危険なアネキ』でセリフを交わした榮倉奈々は木曜10時枠の『蜜の味』にと、やはり縁のある人が今期は同じフジテレビのドラマに出演している。

今はAKB48というアイドルグループに在籍しているが、「将来の夢は?」という質問に「日本を代表する女優になること」と答えている大島優子。月9のレギュラーまで登りつめた今期の『私が恋愛できない理由』も、彼女にとってはその夢への通過点に過ぎないのかもしれない。

でも、大島優子には、もうしばらくバラエティーでの活躍を期待したいな。そっちのセンスもかなり高いと思うので……。そしていつか、もっと年齢を重ねた時に、キャンディーズのスーちゃんみたいな女優さんになっていて欲しい。

 

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。