――根本部分の子どもが欲しいのかどうか悩んでしまう、それほど辛い場面もあったのですね……。しかし、その不妊治療の辛さは世間ではそこまで認知が進んでいないように感じます。

カザマさん自身は不妊治療中、周囲の人の言葉で傷ついたことなどはありましたか?

カザマ:傷ついたというか、違和感を感じた言葉はありましたね。「赤ちゃんはお母さんを選んで生まれてくる」という言葉を聞いたときは悲しくなったというか……。

――直接的に不妊治療に関しての言葉ではないのですね。

カザマ:はい、その言葉を聞いたときに、「じゃあ子どもができないのは、赤ちゃんが私を選びたくないから!? 私が未熟な人間だから? そんなに私ってダメ!?」って悲しくなったりしましたよ……

うそです。本音を言うと「なんだよそれ!(怒)」くらいに心の中でブチ切れてました(笑

――やはり不妊治療中は、相手の意図しない言葉に敏感になったりするものですか?

カザマ:そうですね。とはいえ、変に重く捉えないで欲しいなって気持ちもあります。

不妊治療の話で重い空気になるのが嫌だから、人には話さないって人もいるみたいなのですが、私自身は人に話を聞いてもらってすっきりできることもたくさんあったので。

周囲に不妊治療をしている人がいると、そういった話の時にどう言葉を返せばいいか迷ってしまうこともあると思います。

でも、不妊治療に対する本人の決断を否定したり、子どもを持つ持たないなど、人それぞれであることに対して押し付けがましい発言をしなければ、普通に世間話をするだけで結構救われたりすると思いますよ!

不妊治療、なぜ乗り越えられた?

――カザマさんにとって不妊治療中の苦しい現状を乗り越える救いとなったものはありましたか?

カザマ:私は趣味がアニメを見ること、ゲームをすること、漫画を読むことなのですが、それらをやっていると、現実から少しの間でも離れることができるのでだいぶ助けられましたね。

あとは自分なりに「子どもがなぜ欲しいのか?」というところに対して、納得のいく答えが出るまで時間のある限り考え抜いたり、先ほども話したように夫や友達が不妊治療の話や思っていることを聞いてくれたことにすごく助けられたと思います。

ちなみに、その時間をかけて色々と考え抜いたときに、さっき話した「赤ちゃんはお母さんを選んでくるんだよ」という言葉に対して、子どもが突然できて戸惑っている人に向けた言葉だから治療中の私にはあまり関係のない言葉かもなぁ……という結論に行き着いて、自分の中で消化できた感じですね。

――不妊治療を行い、コミックエッセイという形でその体験を世の中に発信しているカザマさんですが、今子どもを持つことを考えている人、不妊治療を検討している人に向けて伝えたいことは何でしょうか?

カザマ:不妊治療や子どもを持つことに対しては、世の中に本当にたくさんの意見がありますよね。だから、一つ一つまともに受け取って自分の中で噛み砕こうとすると、不妊治療を受けている本人の精神状態や考え方がパンクしちゃって大変なことになると思うんです。

きっとどのみち正解なんてないと思うので、自分にとって良さそうな意見だけを大事にして、その他はバンバンシャットアウトして! カスタマイズしながら心の健康を保って欲しいなって思います。

ストレスをためちゃうと、赤ちゃんになる卵の成長も阻害しちゃいますからね……

現代の母親、そしてこれから母親になろうとする人にとって不妊治療は、思っているよりもずっと身近な存在かも。

今回インタビューしたカザマアヤミさんの『出産の仕方がわからない!』は、不妊治療中や妊娠中の体験を、つい笑ってしまうエピソードとともに描いています。

不妊治療って何? どんなことするの? 気になり始めたら、母親になる本人や旦那さんはもちろん、職場の部下や友人が不妊治療をしている、妊娠した、そんな人にも是非手にとって欲しい一冊です。

ライター&エディター。マーケティング、広告関係の職種を経て、出産をきっかけにライターに。現在は女性向けや子育て関連等のwebメディアでライター、エディターとして活動し、2歳児のマイペースな息子にのんびり育児を実践中。猫と焼肉とビールをこよなく愛するテンプレート小市民。