これらに対して、お喋りも上手でお友達ともうまく付き合うことができ、集団行動もきちんととれる“学習障害児(LD児)”は、幼稚園や保育園で文字の読み書きをしっかり指導している園でない限りは、本格的な勉強の始まらない幼児期に発見することが難しい障害だと言われています。

小学校に入学して、極端に読み書きができないことで気付かれればまだ良いのですが、そのまま「怠けている!」「努力不足!」「勉強に対する気合が足りない!」と先生からも親からも誤解されてしまうことも…。

ずっと叱られながら中学生、高校生まで成長したり、また、大人になっても自分がそうであることを知らずに苦しんでいる人もいます。

よく考えてみれば、“他の人がどのように文字を見ているか”については当人はわからないのですから、「自分だけ違った見え方をしていて読めない」とは意識しにくいものです。だから、本人がSOSを出すことはないのです。

学習障害児(LD児)とは

Learning Disabilitiesの頭文字をとって“LD”と言います。

文部科学省では次のように定義されています。

学習障害(LD)の定義 <Learning Disabilities>

“学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。

学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。”

平成11年7月の「学習障害児に対する指導について(報告)」より抜粋

次のような種類があります。

・読字障害(ディスレクシア)・・・読みの困難

・書字表出障害(ディスグラフィア)・・・書きの困難

・算数障害(ディスカリキュリア)・・・算数、推論の困難

その代表的なものは、読み書き困難と言われている“ディスレクシア”です。難読症、識字障害、(特異的)読字障害、読み書き障害とも訳されます。

ディス(dys)はギリシャ語の「困難」「欠如」という意味、レクシア(lexia)は「読む」という意味です。

弱視のように目そのものに問題があるのではなく、脳機能の障害です。見てはいるけれども“読めない”のです。脳の中で見た文字を音声化する箇所がうまく機能していないため、文字が読めず文章を読む時もたどたどしくなります。

私もこのような子に何人も出会いました。たとえ綺麗に書いていたとしても単に図形を写しているだけで、「あなたが書いているこの文字はなんと読むの?」と聞くと「わからない」と答える子もいました。

どのように見えているのか

この障害は、例えば“やま”という字を視覚的に捉えることは出来るけれども、これを音声化することに困難を示します。そのためスラスラと読むことができません。

中には字が歪んで見える、上下左右反転している、にじんでいるように見える、立体的に見えてしまうなど、通常とは違う見え方をしているLDの人もいます。