オウム返し

オウムは「こんにちは」と言えば「こんにちは」と言いますが、それ以上でもそれ以下でもありません。

オウムに「行ってきます」と声をかけたら「行ってらっしゃい。気を付けてね」とは答えてくれず、会話は成り立ちません。

言葉の遅れのある自閉症の子には、このオウム返しがよく起こります。

筆者の息子はもう高校生ですが、未だに朝、登校前に玄関で私が「行ってらっしゃい」と送り出すと、「行ってらっしゃい」と元気に手を振りながら出かけていきます。

相手と自分の立場の違いによって言い方を変えることがなかなか出来ません。これはある意味、先の“逆さバイバイ”と同じですね。

幼児期は「何が食べたいの?」と聞くと「何が食べたいの」と答え、「どこに行きたいの?」と聞けば「どこに行きたいの」と答えていました。

小学生の頃にタクシーに乗った時、運転手さんから「僕のお名前は?」と聞かれたときも「僕のお名前は」とそのまま返していました。

また、自分のことを聞かれているとは理解できず「“あんどうかつみ”です」と運転席のネームプレートをそのまま読み上げていたこともありました。

こんな時は選択肢を与える質問の仕方で、「カレーライスとオムライスとハンバーグ、どれが食べたい?」と聞くようにして意思確認をしていました。

また、ママが「お帰りなさい」と言ったら「お帰りなさい」と言ってしまう場合は「ただいま」と手本を示し、それこそ、これをオウム返しさせて答え方を教える方法もあります。

「クレーン現象」「逆さバイバイ」「オウム返し」がない自閉症児もいる

“スペクトラム”とは、日本語に訳すと“連続体”です。自閉症は“自閉症スペクトラム(ASD)”と呼ばれるように連続体です。軽い子も重い子もいます。知的遅れが伴う子、正常範囲の知能の子、優れた知能の子もいます。

ですから、すべての自閉症児にこれらの行動が見られる訳ではありません。

自閉症の一つのタイプである“アスペルガー症候群”の子は、よくしゃべります。“逆さバイバイ”も“オウム返し”も“クレーン現象”も、全く起こらないケースも多々あります。

定型発達児でも起こることも

自閉症の子どもでなくても、まだ言葉が出ない時期にクレーン現象が見られることがあります。オウム返しも見られます。ですから「クレーン現象をした!オウム返しをした!うちの子、もしかして自閉症?」と、それだけを取り上げて過度に不安になることはありません。

実際に発達障害があるかどうかの診断は、その他の様々な検査を通して行われます。

ただ、心配が膨らみ、そればかりに頭が支配されて親自身が「心ここにあらず」の状態になってしまうと子どもにも良い影響を与えません。

もし、気になって仕方がないのであれば、発達障害を診てくれる小児専門の精神科の医師に相談してみましょう。

病院は敷居が高いという場合は、お住まいの地域の自治体の保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所などに出かけてみましょう。相談先など適切なアドバイスをもらえます。

まとめ

クレーン現象もオウム返しも逆さバイバイも、人と関わろうとする本人にとってはコミュニケーションの一つです。これらを目にして親が怒ったり、悲しむ顔をすることは止めましょう。

もし、発達障害だと診断されたのならば、これからの子育ての仕方を学ぶ意味でも療育を受けるのも良い方法です。子ども自身だけではなく、適切な関わり方を親が学習できるからです。

大事なわが子の特性に合った関わり方に親がスイッチを切り替えることにより、子どもも親も過ごしやすい日常を送ることができますよ。