ペンタゴン『WANDERLUST』

高崎ペンタゴンの2枚目のフルアルバムをあげたいです。ペンタゴンって私、ちょっと最初は印象が悪かったんです。彼等がどういう音が出したくて、どういうオリジナリティあふれる理想を持っているのか分からないなーと。ケレン味はあるけど、「原材料・MEJIBRAYアルルカン」みたいな。「近場から要素とりすぎ」みたいな。

でも、今回でグッと印象が変わりました。ヒットを作るということは、「普遍的な共感を、奇抜に」っていわれるじゃないですか。『今日から僕は改札機』という曲があって、それはまさにそうだなあと。歌ってることがシニカルで、展開も独特だし。「日常の歯車になるけど感情は持っていよう」みたいなメッセージ性があって奥行きのある曲なんです。

山口:僕もあの曲好きでした。アルバム全体としても、自分達のやりたいことをやりたいようにやっている感じがあってよかったです。

高崎:身も蓋もないことを言っちゃうと、どこに行きたいのかコンセプトがよくわかんなかったのが、今回のアルバムで見え始めたって感じです。スター性を帯び始めているともいえる。ルックス先行、戦略先行みたいなところもあったけど、それば武器でもある。若々しいしみずみずしいパワーがある。そういう若さ特有のギラツキ感って今しか出せないものだから。

藤谷「伸びしろが見える」って大事ですよね。MVでもちょっと「話題先行」的だった部分をバンド側で茶化してるような部分があるのも面白いなと思いました。

 

藤谷:ほかには上半期リリースされたものでは、ラッコ『虫入りチョコレート』とか、Initial'LVISION』なども印象に残りました。やっぱりメロディの良いものに惹かれます。heidi.『邂逅』もよかったですね。

山口:heidi.はいい作品を作ってますよね。まあ『邂逅』は去年の12月28日発売でしたけど。

藤谷:誤差です。

山口:ええ。ちょいはみ出てるけどそれぐらい推したい作品ということで!

高崎ザアザアの『不幸な迷路』もよかった。30代以上にウケそうなアルバムです。

藤谷摩天楼オペラが4人体制になってからの初のフルアルバム『PANTHEON -PART 1-』も充実した内容でした。こうやって振り返ってみると、色々充実していましたね。

もう下半期に入って、GLAYがアルバム『SUMMERDELICS』をリリースしていますし、DEZERTも10月にシングル発売するそうで。そしてMUCCD'ERLANGERPlastic Treeのトリビュートアルバムも控えています。いや~楽しみです。

高崎:ヴィジュアル系はまだまだ豊かなジャンルだなと思えた有意義な座談会でした。ヴィジュアル系って実はファンの数に対してCDはかなり売れていて恵まれてると思うんですよ。だからどのバンドも、これからも円盤で曲を出す事の意味に向き合い続けてほしいなと思います。

逆に映像も音楽も配信に振り切って、インストアイベントはまた別の形態でやって収益化……、とかいうバンドがいても面白いかも。

山口:いろんな活動スタイルをとるバンドが出てくると面白いですよね。ヴィジュアル系でもサブスクリプション型サービスで配信する人たちは少しずつ出始めてきましたが、海外ファンも多いジャンルなんだから、あのサービスとはもっと積極的に向き合わなきゃいけない部分もあるんじゃないかなと思います。

それゆえにCDを出すことの意味は重要になってくると思うし、CDは藤谷さんが話していた「狭義のヴィジュアル系」を表現しやすい媒体でもあると思うので、これからも面白いCDが出てくることを期待してます。

プロフィール

山口哲生:1981年生まれ。愛知県出身。音楽雑誌編集を経てフリーランスに。邦楽をメインに雑誌・WEB・ファンクラブ会報などで幅広く執筆中。「最近何か面白いことありました?」といろんな人に聞くのが好き。

高崎光:平成生まれの若手フリーライター。元音楽雑誌編集・ライブハウススタッフ。執筆ジャンルはロックからアニメ、ガールカルチャーまで、最先端のニヤニヤワクワクできる事全般。

藤谷千明:1981年生まれ。山口県出身。工業高校を卒業し自衛隊に入隊。その後さまざまな職を経てフリーライターに。近年はV系が中心。