「巣ごもり観戦」など家電量販店の売り場づくりも変化している

エディオン最大級の売場面積を誇る「エディオン京都四条河原町店」が6月25日にグランドオープンした。ANKER STOREや家電量販店で初の「Makuake SHOP」を開設するなど新たな取り組みに挑戦。一方で世界遺産や歴史的建造物が多い京都らしく、京都景観条例ガイドラインに沿った訴求など伝統を守りながら地元から親しまれるための工夫がみられる。

ネットでわからないことがわかる

京都の繁華街のど真ん中、四条河原町の交差点で、阪急電鉄の京都河原町駅と直結する好立地に構えるエディオン京都四条河原町店は、売場面積9553平方メートルを誇るエディオン最大級の店舗だ。2020年5月に京都マルイが閉店したのを受け、住友不動産の複合商業施設「京都河原町ガーデン」の地下1~6階に展開する。

同店は「きょうのあなたに、きょういちばんを」をコンセプトに掲げ、地元京都の顧客はもちろん、その日に来店した観光客など多様な顧客からも支持される店として末永く愛される店舗にしていく狙い。さっそく店内をのぞいてみよう。

まず1階の「ANKER STORE」が目を引く。家電量販店でANKER初となる常設直営店は、21年2月に大阪の「エディオンなんば本店」にオープンしており、ここ京都でも1階の目立つ場所で展開している。

ANKERの代名詞ともいえる大容量モバイルバッテリやケーブルなどの携帯アクセサリはもちろん、ワイヤレススピーカー、プロジェクター、テレワーク関連、防災、キャンプ関連など幅広い商品がそろう。

特に、実際の商品が試せる「タッチ&トライ」のコーナーでは、専門の販売員がついて使い方などを教えてくれる。完全ワイヤレスイヤホンは、ネットで見ただけでは質感やフィット感がわからないが、それを確かめられるのはリアル店舗ならではのメリットだ。

ほかにも1階では最新の5G体験コーナーや、高級ブランド腕時計コーナーも展開。ロレックスやオメガ、カルティエ、セイコーなどの高級腕時計が、上層階ではなく1階にあるというのも家電量販店ではなかなか見かけない光景である。

2階のデジタルライフフロアで展開するクラウドファンディング、Makuakeリアル店舗のMakuake SHOPも、家電量販店で初となる新たな試み。Makuakeで進行中の話題のプロジェクト商品などを実際に手にしながら体験して購入することができる。

通常の家電売り場でなかなか見かけないような、尖った商品や面白いアイデア商品などを見て回るだけでも十分に楽しめる。

YouTuberやVlogger向けの提案も

2階では、ゲーミングコーナーにも力が入っているのが伝わる。通常のデスクスタイルだけでなく、座卓でeスポーツができる環境を実際に展示して臨場感を演出する。

ゲーミングと合わせて、YouTuberやVloggerといわれるSNSで自らの動画を発信する人たち向けの提案コーナーも面白い。まるで自分の部屋がスタジオであるかのように、動画配信の環境を整えるために必要な機器がわかりやすく展示してある。

もちろん、テレワーク需要で爆発的な売れ行きをみせるディスプレイも、エディオン最大級店舗ならではの品揃えが圧巻。わかりやすくインチ別に展示したり、同じコンテンツを映して画質を比較できるようにしたりするなど、充実した品揃えをアピールするだけでなく、選びやすくするための配慮が感じられる。

コロナ禍で家電量販店の売り場にも変化

長引く新型コロナの影響も、家電量販店の売り場に変化をもたらしている。密を避けるアウトドアでの楽しみ方の提案や、巣ごもり観戦など、新しい生活様式を取り入れた提案だ。

これまでは、完全ワイヤレスイヤホンや小型ワイヤレススピーカーなどは、モバイルやパーソナル空間で利用シーンを提案することが多かったが、キャンプやアウトドアに「音楽を持ち出す」という従来にはなかった発想の提案も見られる。

開放的なアウトドア空間で好きな音楽を聴きながら過ごすというのも、心身ともに癒しの時間を必要とするコロナ禍ならではのスタイルなのかもしれない。

同じように、「巣ごもり観戦」のコーナーも、テレビと調理家電、サーキュレーター、空気清浄機、ビールサーバー、エクササイズグッズなどを融合させたコロナ禍ならではの提案コーナーといえるだろう。

さて、同店で目立ったのが、家電製品に関連する調理グッズや衣類洗剤、柔軟剤、芳香剤、オーラルケアなど、ドラッグストアかと見間違えるほどの日用雑貨アイテムが充実している点だ。

家電製品を購入した際のついで買いを促すだけでなく、普段の日常の買い物としても利用してもらおうとする姿勢が感じられる。地元京都の客から愛されるための象徴的な取り組みといえる。

最後に京都の老舗店とコラボした売り場も注目。西陣織金襴を使ったエディオン限定商品や、おりがみ文化を取り入れたエアコンのオリテウム室外機カバー、漆塗りをあしらった照明器具など同店限定の商品も数多く展開する。

エアコン売り場ではエディオンの工事・サポート力も訴求している。和風住宅の美しい京都の街並みを損ねないように、京都景観条例ガイドラインに沿った木製室外機カバーや住宅の色と合わせた室外機塗装、ブラウンをベースにした木目調の屋外配管化粧カバーを用意するなど、京都の街と調和する同店限定の取り組みも光る。

京都の四条河原町を訪問した際は、エディオン京都四条河原町店に足を運べば、新しい発見に出会えるに違いない。(BCN・細田 立圭志)