テレワーク特需の反動で一時前年割れしたキーボードだが、ここにきて再び売り上げが拡大している

パソコン用キーボードが好調だ。平均単価(税抜き・以下同)が5000円を超えるまで上昇したことで、販売台数の伸びもさることながら、販売金額の伸びも目立っている。手ごろな価格のキーボードだけでなく、1万円を超える「高級品」も売れ始めている。全国の家電量販店などの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。

コロナ禍の緊急事態宣言発出に伴い、テレワークが急速に広がった昨年4月、キーボード市場は大きな伸びを示し始めた。販売台数前年比で180%から130%前後で推移し、テレワーク特需ともいえる状況になった。前年比の大きな伸びは今年の3月まで続いた。この4月以降、昨年の特需の反動が出て、前年を割れる月もあったが、台数・金額のいずれも前年を割れたのは6月だけ。この9月は台数118.5%、金額116.9%と揃って2桁増の水準を記録。10月は台数こそ103.5%とおとなしかったが、金額では111.5%と2桁増の水準を維持した。コロナ禍が落ち着きを見せる中、特需の状態は解消してきているものの、市場は依然堅調に推移している。

メーカー別ではロジクールとエレコムがし烈な首位争いを演じている。いずれもシェア30%台で一騎打ちの様相だ。おおむねロジクールがトップシェアを維持しているが、過去13カ月ではエレコムが2回首位を奪取。この10月もシェア差わずか2.3ポイントでロジクールに迫る僅差の戦いを続けている。しかし、両者のキャラクターは対照的。ロジクールは平均単価が6000円前後で、しかもジリジリと単価を上昇させている。プレミアム製品やゲーミング用途の製品に強く、ここにきてブランド力をより強くしてきた感がある。一方エレコムはリーズナブルな製品を中心に展開。平均単価も2000円前後と手ごろな製品が強い。上位陣では平均単価が1万円を超えるRazerが4位につけており、全体的にも高価格化が進みつつあるといえる。

10月の販売台数ランキングで最も売れているのは、ロジクールのワイヤレスキーボード「K295GP」。防水ながら3000円を切る価格が人気のフルサイズキーボードだ。シェアは3.3%。以下、ロジクール製品が4位までを占める。エレコム製品は5位にシェア2.1%で「TK-FDM063BK」が登場する。ワイヤレス接続ができるうえ、マウスとセットで1000円台なかばのお買い得な製品だ。

1万円以上の製品で最も売れているのがロジクールの「G PRO X Gaming Keyboard」。平均単価は1万円台前半だ。ゲーマー仕様のメカニカルキーボード。はんだ付け不要でスイッチを入れ替えることができるのが特徴だ。キーボード全体のランキングでは7位でシェアは1.7%。Razerの製品は24位に登場する「Huntsman Tournament Edition JP Linear Optical Switch」が最も売れている。こちらも1万円台前半。従来のメカニカルスイッチよりも高速入力ができる「Razer リニア・オプティカルスイッチ」を採用したのが特徴だ。(BCN・道越一郎)