幻想的なパフォーマンス、特に必見の名曲
ノスタルジックなメロディーと歌詞が心にしみる「FRIED GREEN TOMATOES」、社会に漂うリアルタイムな暗い空気感を切り取った「Winter Moon Winter Stars」、シンプルな音で張り詰めた緊張感を作り出す「Tiny Soldier」、ダークでゴシックな世界観を壮大に表現した「Holy Knight」など、長いキャリアの中で培った音楽性が生きた、聴きごたえのある曲の連続なので飽きることがない。
中でも注目したいのは、2021年8月にリリースした59枚目のシングルで、本アルバムのキー曲でもある「BAD APPLE」だ。
あいみょんや菅田将暉などの楽曲のアレンジを務めるTomi Yoをアレンジャーに迎えた本楽曲は、浮遊感のある新鮮なサウンドとGLAYが持つ哀愁が絶妙にマッチした名曲。
ライブでは、King Gnuの常田大希が主宰するクリエイティブチーム・PERIMETRONが手掛けたジャケットのアートワークとリンクした、巨大な林檎の木を模したオブジェを背景に演奏されている。
視覚からのアプローチも加わった幻想的なパフォーマンスは、この一曲だけでもチケット代の元が取れているのではと思うほど素晴らしい見ごたえがある。
また、TERUのMCに心動かされる場面も多かった。序盤の「Hypersonic」で、歌詞にはない“小橋の夢”を叫んだシーンには早くも胸が熱くなったし、終盤に客席を見つめて「これからも同じ時代を歩んでいきましょう」と言ったシーンでは、不安を抱える人々の心が無意識に求めている言葉を汲み取っている気がした。
つくづく彼の真っすぐな言葉には人を救う力がある。そう、GLAYには言葉の力もあるのだ。
特に本編ラストを飾った「祝祭」の歌詞には、聴く人の心を強く動かす力を感じた。混沌とした社会の中で人間の愚かさを憂いながらも、最後に綴られた<それでも愛おしい>という言葉は、年齢を重ねた今だからこそ出てきた言葉だと思うし、大きな衝撃を受けた。
この配信で唯一、演奏に合わせて手書きの歌詞が表示されていたのも、ファンの皆に今この言葉を伝えたいという強い思いがあったのだろう。
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