ネックスピーカーの販売台数構成比は未だ9%弱程度に留まる

最近、テレビの音量を上げ気味だ。独身時代はアパート暮らしで近所に気を遣ってテレビの音量を極力下げて視聴していたのだが、所帯を持ち一軒家に住み始めてから様子が変わった。ソファで隣に座る長男がゲーム機でYouTubeを閲覧、その足元では次男が妻のスマホを奪いYouTube Kidsを勝手に起動している。おかげで四方八方からゲーム実況者の声や幼児向けチャンネルの動画再生音がひっきりなしに聞こえ、結果、視聴しているテレビの音が聞こえづらく、ついつい音量を上げてしまう。いったいどうすれば…と困っている時に知ったのがネックスピーカーだった。

 

販売台数構成比は8.6%と足踏み

ネックスピーカーを装着してテレビを視聴するようになってから、快適な生活が送れるようになった。周りの音も多少入ってはくるものの、それ以上にテレビの音声がクリアに耳元に届くため、テレビの視聴に集中できる。

そんなネックスピーカーは、一時期某トーク番組の芸人によるレビューなどで話題を集めたが、実売データをみると市場の拡大はなかなか進んでいない。

全国の主要家電量販店・ネットショップからPCやデジタル家電などのPOSデータを集計している実売データ「BCNランキング」によると、2021年2月のスピーカ市場におけるネックスピーカーの販売台数構成比は5.8%で、同年12月の年末商戦時は10%弱まで拡大したものの、22年2月になると8.6%と足踏み状態だ。

市場が伸び悩んでいる理由は、いくつか想定される。店頭で選ぶ際にイヤホン・ヘッドホンと違って試聴できないケースが多いため、購入する際の決め手に欠ける点、または平均単価が多くのメーカーが1万円越えで、ソニーに至っては約2~2万6000円と、手を出すにはまだちょっと高めなこと。新ジャンルの製品でありながら体験する機会が少ないので、イヤホンやヘッドホンで充分、という意見も多いのかもしれない。

それでも22年2月は販売金額、つまりスピーカー市場における売り上げベースでは14.9%を占める。スピーカー市場の15%を稼ぐ製品だけに、今後のさらなる認知拡大に期待したい。

2021年9月にソニーの新製品が状況を一変

ここでネックスピーカーのメーカー別シェアに注目してみよう。21年2~10月まではシャープが1位で販売シェアの約4~3割で推移して独走だった。2位以下はJVCケンウッド、オーディオテクニカ、ソニーが入り乱れる混戦状態だった。

状況が一変したのは21年9月以降。8月に8.1%まで下がっていたソニーが、新製品「SRS-NS7」シリーズを発売した後、一気に20%超のシェアを獲得。21年12月の年末商戦では50.1%となり、ネックスピーカー市場の半数をソニーが占める事態となった。

同じく21年9月にはパナソニックも新製品「SC-GN01」を引っ提げてネックスピーカー市場に参入し、平均して約10%強のシェア獲得に成功している。

最後に22年2月のネックスピーカー販売台数ランキングを見てみよう。1位はソニーの「SRS-NS7」で、平均単価は2万6000円と他製品より群を抜いて高めだが、21.1%のシェアを獲得しており人気だ。

次いでシャープの「SRS-NB10」、パナソニックの「SC-GN01」が続く。SC-GN01はネックスピーカー製品の中でも珍しいUSBケーブルによる有線接続タイプで、ゲーム機への直接接続を行い、無線接続による音の遅延ストレスをなくしたい人に向けた製品だ。

オーディオテクニカの「AT-NSP300BT」やライソンの「KABS-014」は1万円未満で購入できるので入門機として最適だろう。他にも、ネックスピーカーの音の臨場感を体験してみたいというエントリー層に向けた製品も販売されているので、気になる人は是非チェックしてほしい。(BCN・栃木 亮範)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。