【なぐもんGO・87】 回転寿司チェーン大手のサイドメニューには「ラーメン」がある。登場した初期にこそ戸惑う人もいたが、いまやラーメンだけ食べて帰る人もいるという。しかし、“寿司”と“ラーメン”という並びはいまだに不思議だ。一見、寿司に似合わないラーメンをなぜ提供しているのか。最初にラーメンを提供した回転寿司チェーン「くら寿司」にそのワケを聞いた。
10周年間近のくら寿司ラーメン
くら寿司でラーメンの提供が始まったのは2012年11月。ターゲットは「寿司を食べない人」だ。その狙いについて同社 広報部の小坂博之マネージャーは、「家族に寿司を食べたい人と苦手な人がいる場合、寿司を食べる機会は自ずと限られる。家族で外食に行く際に、寿司しか提供していない回転寿司は候補にあがりにくい。そんなとき、寿司と本格ラーメンを同時に提供している店があればどうか。ラーメンは子どもが好きな食べ物でもあるので、家族みんなで食事を楽しめる」と、食事を楽しむ機会を提供するための施策であると同時に、幅広い客層を取り込むためであったと語る。
最初に提供したメニューは「7種の魚介 醤油らーめん」だった。魚介の出汁はたしかに寿司屋と相性がいい。今では「7種の魚介 追いかつお醤油らーめん」(450円)に進化している。小坂マネージャーによると、「毎日、店舗で1時間以上かけて昆布・いわし・鰹など7種類の魚介から出汁とっている」とのこと。しかも1日数回に分けて製造し、品質管理を行っている、というこだわりっぷりだ。
来店客が注文した商品を自動で席に運ぶ「オーダーレーン」も、ラーメンを提供するための重要な装置だ。初めて見たら驚くほど速いが、商品が崩れたり、こぼれたりしないよう緻密に計算された“速度”と、簡単に着脱できる独自の“ふたカバー”。この二つが整ったことで、ラーメンを迅速かつ安全に届けることができるようになった。
そもそもくら寿司は、提供を開始する10年以上前からラーメンの開発を続けていた。当初はくら寿司とは別にラーメン単体でビジネスを立ち上げていたという。しかし、当時、無添加で出汁の味を安定させることが難しく、やむを得ず撤退。そこで得た知見を現代のノウハウと組み合わせて昇華させ、くら寿司で提供するに至った。
コスパ最強の担々麺
実際に注文し、運ばれてきたラーメンを手に取る。ふたカバーをワンタッチで外してふたを開けると、なんとも落ち着く鰹節を中心とした出汁の香りが漂ってきた。スープを口にすると魚介の旨味が流れ込んでくる。麺は太麺。スープと絡むと、噛めば噛むほど味が出る。試しに寿司と一緒に食べても、違和感がない。
次に小坂マネージャーおすすめの「胡麻香る担々麺」(450円)を頼んでみた。テレビで「コスパ最強の担々麺」と紹介されたらしい。こちらも魚介の旨味とスパイスがマッチした味わいだ。イチオシの食べ方と言うことで「旨だれ牛カルビ」(110円)を投入。スプーンですくいながら食べてみると、即席のクッパだった。ただ、少し味が濃くなるのでバランスを見ながら楽しみたい。
また、取材した原宿店では、自動でクレープをつくるマシーンが稼働している。SNS映えする見た目や、寿司や揚げシャリが入ったユニークな具材から人気も高く名物になっている。あまり見ない組み合わせだが、クレープ生地と意外に相性がよく、おいしく食べることができた。思ったよりボリュームがあり、ラーメン2杯と握り4貫を食べた後だと満足感がある。
さまざまなメニューをこだわって提供することで、前日に寿司を食べていても行ける、食べるものに困ったときに行ける店舗となったくら寿司。3月にオープンした新店舗「スカイツリー押上駅前店」では、「ビッくらポン!DX」やデジタル射的のシューティングゲーム「ビッくらギョ!」を展開し、アミューズメント性も強化している。幅広い人が食を楽しむことができる場として、今後も進化していきそうだ。(BCN・南雲 亮平)