「AirPods」シリーズをはじめとする完全ワイヤレスイヤホンの登場で、無線タイプの人気が高まっているイヤホン・ヘッドホン市場。一方で有線タイプも堅調だ。ヘッドセット含むイヤホン・ヘッドホン市場の有線・無線の販売数構成比はほぼ半々。無線タイプと比べ平均単価が3分の1程度と手ごろなこともあって、有線タイプの需要は根強い。コロナ禍によるテレワークの広がりも有線タイプの販売数量を押し上げているようだ。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」でヘッドセット含む有線イヤホン・ヘッドホンの販売状況をまとめた。

2019年4月の有線イヤホン・ヘッドホンの販売数を「100」とした指数は、20年3月から増加に転じた。アップダウンが激しいものの、100以上をキープして推移しており、21年1月には最も高い「134.7」を記録した。指数は21年11月を除き100を上回っており、直近の22年4月も「101.3」と100を超えている。こうした有線イヤホン・ヘッドホンの好調は、コロナ禍以降、対面での会議や面談がビデオ会議に置き換わったことによって有線イヤホンを利用するユーザーが増えたことが要因の一つとみられる。また、eスポーツブームや自宅時間の増加に伴うゲームプレー時間の増加も市場に好影響を与えているようだ。ゲームプレーヤーは遅延防止のため有線ヘッドセットを利用するユーザーが多いためだ。

メーカー別販売数シェアでは、エレコムとオーディオテクニカが首位争いを繰り広げている。エレコムは20年3月に首位に躍り出ると、4月には22.5%までシェアを拡大。「HS-HP27U」など、ビデオ会議に適した低価格帯のヘッドセットが販売台数をけん引している。21年11月から22年1月にかけてオーディオテクニカに逆転されるも、22年2月以降は首位を奪還。4月も18.3%と僅差ながら首位を守った。

3位以下ではアップルとロジクールの伸びが目立つ。19年4月と比較すると、アップルは3.7ポイント増の8.3%、ロジクールは4.7ポイント増の7.9%を記録した。アップルのラインアップは、「EarPods with Lightning Connector」と「EarPods with 3.5 mm Headphone Plug」のわずか2製品のみ。しかし、純正品である強みを活かしてiPhoneユーザーを中心に販売台数を伸ばしているようだ。ロジクールはテレワーク需要に加え、ゲーミング分野の需要も取り込みシェアを伸ばしている。

左右がケーブルでつながっているタイプのワイヤレスイヤホンに加えて、完全ワイヤレスイヤホンもすでに定番商品になりつつある。ただ、紛失の可能性や充電の手間を嫌ってあえて有線タイプを選ぶユーザーも一定数存在する。近年ではレトロな製品を好む若年層がファッションとして有線イヤホン・ヘッドホンを使用する動きもみられる。イヤホンジャック非搭載のスマートフォンが増えるなど、ワイヤレス化を促進する流れはあるものの、有線製品の市場はしばらく一定の規模を保って推移することになりそうだ。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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