2022年9月のグラフィックボード市場でASUSが15年5月以来、7年4か月ぶりにメーカー別販売台数シェアで首位を獲得した。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」で明らかになった。

グラフィックボード市場は18年9月から21年3月まで2年半の間、MSIが首位を維持し続けていた。ところが、21年4月を境に状況が大きく変化し始めた。一部でマイニングブームが再燃するとミドルからハイエンド製品の価格が高騰。さらに、世界的な半導体不足のため需給のバランスが崩れ、市場の混乱が加速した。メーカーシェアも乱高下し、MSI、シー・エフ・デー販売、ASUSによる三つ巴状態に突入した。22年に入りシー・エフ・デー販売が失速。一方、MSIは2月にトップシェアへと返り咲き、8月まで首位の座を守った。ASUSは、「GT730-SL-2GD3-BRK-EVO」のようなエントリークラス製品のほか、TUFシリーズやROGシリーズといったゲーミングブランドの貢献でシェアが拡大。6月以降シェア2位で推移していた。そして9月、ラインアップに「DUAL-RTX3070-O8G-V2」など新製品も加わり、ASUSのシェアは26.5%に拡大。24.4%のMSIを逆転し、7年4か月ぶりに首位の座を奪った。

グラフィックボード市場の平均単価は、21年1月には4万円台だったが21年3月に5万円台、4月に6万円と月を追うごとに上昇。21年6月には8万4400円まで急上昇した。翌7月には6万円台に戻ったが、その後は大きく値下がりすることはなく、6万円台で推移した。しかし、22年になると下落に転じた。1月に5万9500円と5万円台になると、4月には5万5500円まで下落。8月には4万9300円と18か月ぶりに4万円台を記録した。主要な仮想通貨の一つ、イーサリアムのアルゴリズム変更によりマイニング需要が減退。NVIDIAとAMDが新たなGPUを発売することに伴う在庫処分などの影響もあり、価格はようやく落ち着きを見せつつある。

20年1月の販売台数を100とした指数は22年9月に「66.9」と、市場規模は3割ほど縮小した。依然として続く半導体不足や不安定な世界情勢、急激な円高など懸念材料には事欠かないが、価格の落ち着きや新製品の登場を契機としたグラボ市場の回復に期待したい。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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