2022年は、完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場にとって、それまでの活況に陰りが見える年になった。販売台数・金額ともにほとんどの月で21年を超えた一方で、7月にアップルが実施した「AirPods」シリーズの値上げなどが影響。勢いが鈍化した。家電量販店やネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」を基に、2022年のTWS市場の動向を振り返る。

TWSの販売台数・金額前年同月比は、5月までは前年を上回って推移した。特に、ソニーが新製品「LinkBuds」を発売した2月は大きく伸長。台数130.8%、金額133.0%を記録した。しかし、ソニーのヒット商品「WF-1000XM4」発売から丸1年が経過した6月は、反動減で台数・金額とも前年を下回った。7月1日にはアップルが「AirPods」シリーズの値上げを実施したが、値上げのタイミングを遅らせた一部販売店に駆け込み購入が集中。7月は2桁増に戻した。8月は前年にBeats Electronicsが「Beats Studio Buds」シリーズを発売し数値が上振れたこともあり、台数104.4%、金額108.7%と1桁増にとどまった。9月にはアップルが「AirPods Pro(第2世代)」を発売。特に金額では130.7%と大幅に伸びたが、10月には鎮静化した。そして12月、年末商戦が振るわず、台数91.4%、金額93.9%と遂に前年割れ。「AirPods」シリーズの値上げがボディーブローのように効いてきている。平均単価(税抜き、以下同)も上昇。1月は1万4400円だったが、7月には1万7000円まで急上昇した。8月には一旦1万4000円台に下がったものの、その後は1万6000円前後で推移している。

メーカー別販売台数シェアはアップルが年間を通して首位を守った。しかし、1月に30.0%だったシェアはほぼ2割台で推移。駆け込み購入で7月に3割を超える場面もあったが、12月には年間で最も低い25.0%まで落ち込んだ。ここにも値上げの影響が及んでいる。一方、JVCケンウッドは10.0%のシェアを獲得し3番手につけている。3000円以下で購入できるエントリー機種「HA-A5T」シリーズが人気。気軽にTWSを使いたい層から支持を得ているようだ。また、年末にかけてシェアを伸ばしたのはBOSE。9月末に発売した新製品「Bose QuietComfort Earbuds II」が好調だ。8月に1.4%だったシェアは12月には5.7%まで拡大し、オーディオテクニカと4位争いを展開している。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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