2023年2月、完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場のメーカー別販売台数シェアでJVCケンウッドが2位に浮上した。アップルが不動の1位を誇るTWS市場だが、18か月にわたって2位の座を守ってきたのはソニーだった。しかし、値上げなどの影響で3位に後退した。家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」で明らかになった。

ソニーがTWS市場で2位から陥落したのは、過去2年で数えるほどしかない。JVCケンウッドが「HA-A8T」「HA-A11T」などの新製品でシェアを伸ばした21年の4月~5月と、「Beats Studio Buds」の発売でBeats Electronicsのシェアが急騰した同8月の3か月間のみだ。いずれも新製品発売直後の一時的な勢いによる逆転だった。しかし、今回の変動は理由が異なる。23年2月のJVCケンウッドのシェアは前月から0.6ポイント減の11.80%。一方、ソニーは2.3ポイント減の11.76%。いずれも前月からシェアを落としているものの、マイナス幅の差が、僅差でのシェア逆転につながった。主な要因はソニーが23年2月1日に行った値上げだ。

原材料費、製造・物流コストなどの高騰を理由にソニーが値上げを実施したのは、テレビやカメラ、AV機器など273製品。その中に「WF-1000XM4」も含まれていた。21年6月の発売以降、TWSでソニーのシェアをけん引してきた主力製品だ。2万4000円から2万7000円程度で推移していた平均単価(税抜き、以下同)は、値上げ直後の2月、2万9500円まで急上昇。この影響で、22年2月の販売台数を「100」とする販売台数指数は、23年2月に「14.7」まで大きく落ち込んだ。

現在ソニーの売れ筋は、平均単価2万500円の「WF-LS900N」や平均単価8400円の「WF-C500」と、比較的単価の安い製品にシフトしている。一方、今回ソニーを抜いたJVCケンウッドは、3000円台で購入できるエントリー機種「HA-A5T」シリーズが人気。気軽にTWSを使いたいというニーズを捉えた。インフレを背景にした製品の値上げが、メーカーシェアを左右する状況は当面続きそうだ。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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