日本電機工業会(JEMA)がまとめた家事・調理・空調家電など民生用電気機器の8月国内出荷実績が発表された。国内出荷金額は1972億円1000万円で、前年同月比(以下、前同比)93.8%。7月に続き2カ月連続で前同比マイナスとなった。
前年8月は上海のロックダウン解除で出荷実績は大きく伸長
8月の国内出荷金額が前年マイナスとなったことについて、JEMAでは前年8月の出荷実績が高水準だったことが要因の一つと指摘している。
2022年春に中国はゼロコロナ政策で上海ロックダウンを実施し、都市封鎖によって家電製品の生産や供給が滞った。つまりメーカーが製品を出荷したくてもできない状態だったのだ。
このロックダウンは夏前に解除され、品薄や品切れの反動から2022年7~10月の国内出荷金額は前年2桁増という高い実績値になった。つまり2023年8月は前年同月比較の母数が大きいため、相対的に前同比が低くなり前年割れになったということだ。
前年割れの要因はこれだけではなく、JEMAでは家電製品の価格上昇による消費マインドの冷え込みや消費行動が旅行やサービスへシフトした点も挙げている。公表された製品別の実績値を見ても多くの製品の前同比が金額>台数となっており、製品価格の上昇を裏付けている。では、主要製品の8月出荷実績を見よう。
冷蔵庫の出荷実績は台数が前年マイナスで金額はプラス
エアコンの国内出荷台数は72万1000台で、出荷金額は618億3500万円。台数は前同比93.8%、金額は同95.9%で、台数・金額とも3カ月続けて前年割れとなった。4月からの累計台数は前年同期比89.4%、累計金額も同92.6%で累計でも前年割れが続いている。
冷蔵庫全体の出荷台数は32万7000台で、出荷金額は414億5400万円。台数は前同比96.9%と前年割れだったが、金額は同100.4%で前年実績プラスとなった。401L以上の大容量タイプも全体と同様に台数は前年割れの同97.3%だったが、金額は同101.3%で前年実績を上回った。
401L以上の大容量タイプの台数構成比は45.3%で、金額では72.8%を占めている。冷蔵庫全体と大容量タイプの実績値から算出すると、400L以下のタイプの8月出荷実績は台数・金額とも前年割れだった。
洗濯機の出荷台数は31万4000台で前年同月比85.2%、金額は288億8900万円で同84.9%。台数・金額とも7月に続き前年2桁減となった。このうち洗濯乾燥機の出荷台数は同72.3%で、金額は同73.8%。前同比70%台と大きく落ち込んだ。
出荷実績の前年割れは2カ月連続だが、4月からの累計では洗濯機全体も洗濯乾燥機もともに台数・金額は前年実績プラスとなっている。
ジャー炊飯器の出荷台数は9カ月連続で前年割れ
電子レンジの出荷台数は20万1000台で前同比70.5%、出荷金額は64億7500万円で同72.3%。出荷金額は5月から前年プラスが続いていたが、8月は大きく落ち込んだ。4月からの累計では台数が前年同期比91.9%だが、金額は同104.5%で前年実績プラスとなっている。
ジャー炊飯器の出荷台数は30万1000台で前同比86.9%、出荷金額は69億7500万円で同86.9%。台数の前年割れは9カ月連続で4月からの累計でも前年同期比92.3%。累計出荷金額は前月まで前年実績を上回っていたが、8月の落ち込みにより累計で98.3%と台数・金額のいずれも前年同期実績を下回った。
クリーナーの出荷台数は41万5000台、出荷金額は123億9900万円で台数は6カ月、金額も4カ月連続で前年実績を下回った。ただし、出荷台数の前同比88.7%に対して、出荷金額は同98.1%で、出荷単価は大きく伸長している。
前述のとおり、8月出荷実績の前年割れの要因は前年同月との相対比較に加えて消費行動の変化によるものとJEMAでは言及している。前者の相対比較では、前年9~10月の出荷実績が前年2桁増で前年8月と同様に高い水準にある。すなわち、この先の9~10月も前同比の母数は高いため、前年割れとなる可能性がある。
後者では、家電製品の価格上昇はもちろんだが、この8月も含めて消費者物価指数は24カ月続いて上昇中だ。買い控えJEMAの出荷統計の対象製品は生活必需品としての製品が多く、買い替え自体が減っていくとは考えにくい。
だが、故障以外では買い替えを先延ばしにする買い控えが考えられる。また、フラグシップやハイエンドの製品価格がさらに上昇していけば、高機能や多機能でなくてともよしとする層が増加する懸念もある。食料品やエネルギーは価格が上昇しても購入せざるをえないが、家電製品はミドルクラスや普及クラスに代替することができる。このような観点でこの先の国内出荷の動向を注視していこう。