左から根本真陽、河合優実、田中麗奈(C)NHK

 10月25日、東京都内のNHKで、NHKスペシャル「神の子はつぶやく」(11月3日午後10時放送)の取材会が行われ、出演者の河合優実、田中麗奈、根本真陽が出席した。

 「神の子はつぶやく」は、親が信じる宗教への信仰を強いられてきた”宗教2世“当事者たちへの取材を元に製作されたドラマ。10月29日放送予定のドキュメンタリー「ドキュメント“宗教2世”を生きる」に続く「シリーズ“宗教2世”」の第2弾に当たる。

 ある宗教の熱心な信者である母・愛子(田中)の下で育った姉・遥(河合)と妹の祈(根本)。学校での友だち付き合いや行事への参加を禁じられ、宗教活動を強いられてきた2人は、ある出来事をきっかけに、それぞれの信じる気持ちが揺らぎ始める…。

 当事者への取材に基づくリアルな物語をより一層、胸に迫るものにしているのが、出演者それぞれの気持ちがこもった熱演だ。撮影を振り返った河合は、印象的な出来事として、家族の中で唯一、宗教を信じていない父・信二を演じた森山未來とのやり取りを挙げた。

 遥が信二に「神様っていると思う?」と尋ねる場面で、森山が台本にあったセリフから「僕にとっては、家族が神様みたいなもの」に変更。それが「このドラマの中で、宗教とか、神様というものの捉え方のスケールを、がんと広げてくれた感じがした」と語り、「宗教を信じていない人の価値観も尊重してくれるせりふを足してくれたことで、(作品全体を)補完できた感じがして、素晴らしいと思った」と絶賛。

 さらにこのシーンについては、同席していた演出の柴田岳志氏から意外な裏話も明かされた。実は、森山から事前にセリフの変更ついて相談を受けていた柴田氏は、それを相手役の河合と根本に伝え忘れたまま撮影をスタート。ところが、全く驚くことなく、自然に応じた2人の芝居を「台本で感じる以上の何かが見えてくる瞬間」とたたえ、「すごくよかったです」と太鼓判を押した。これに河合も、「初めて触れる言葉なので、より新鮮に感動できました」と答えた。

 一方、「祈は感情の振れ幅がとても大きい女の子だったので、気持ちを込めてお芝居をするのが大変だった」と苦労を語った根本は、「うまく気持ちが入り込めない時に、共演者の方々が一緒に向き合って、アドバイスをくださったり、支えてくださって、とても心強かった」と、周囲の支えがあって生まれた熱演だったことを打ち明けた。

 そんな2人の姿を間近で見ていた田中は「難しいテーマに、2人の娘が真っすぐに丁寧に向き合う姿は尊い」と母親役らしい言葉で述懐。以前も母娘役で共演したことがある河合については「そのとき、深いやりとりができたという充実感があった。目の奥から反応してくれるようなすてきな役者さんだと思っていたので、今回ご一緒できたのはうれしかった」と再会を喜んだ。また、会見への出席自体が今回初めての根本には、「私たちでも言葉を選ぶようなテーマの会見。これをやったら、すごく度胸がつくんじゃないかという話をしていた。よく頑張ったねと言いたい」と温かな言葉でねぎらった。

 最後に「皆さんの中で考えるきっかけになれば。何かを裁いたり、批判したりするのではなく、フラットになるように作った。できるだけ広く、届いていけば」(河合)、「チーム一丸となって作り上げたものなので、多くの人に見てもらえれば」(根本)、「宗教や政治について人と語ってはいけないと言われて育ってきた。でも、このドラマがきっかけになって、世代の異なる私たちも話ができた。多様性ということもあるので、何がいい、悪い、ではなく、個人個人を尊重しながら、孤立して悶々と苦しむのではなく、少しでもそういうことができる世の中になれば」(田中)と、それぞれ作品に込めた思いを語ってくれた。

NHKスペシャル「神の子はつぶやく」は11月3日(祝・金)午後10時放送。