完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場は、2021年12月をピークとして徐々に鈍化していることが家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」により明らかとなった。現状のまま推移すると、22年12月同様、23年12月も前年を下回ると思われる。
20年10月のTWSの販売数量を「100.0」とした指数を算出したところ、一年のうち最需要期は12月、次いで7月が高いことが明らかになった。まず12月の指数を比較していくと、20年12月は158.4、翌21年12月には205.4と躍進。しかし、22年12月は187.8と前年割れに転じた。次に7月の指数では、21年7月の143.0と22年7月の168.2を比較すると、2割近く市場規模は拡大したものの、23年7月は164.9と22年を若干下回った。こうした指数の動きから、21年年末から22年7月頃をピークに市場が鈍化したと言えそうだ。この鈍化の要因の一つに、上位メーカーの相次ぐ値上げが影を落としている。こうしたことを考慮すると、23年12月の販売数量は22年年末を上回ることは難しいだろう。
TWS市場における直近1年間のメーカー別販売数量シェアをみると、アップルが首位であることに変わりはない。しかし、シェアが緩やかに下落しており、23年9月に2位のソニーと1.5ポイント差まで接近した。これは、ソニーの「WF-1000XM5」発売がきっかけ。21年発売の「WF-1000XM4」よりも初速が好調に推移したことが要因だ。しかし、翌10月にはソニーは失速。一方、アップルはUSB type-C搭載のiPhone 15シリーズ発売に伴い、USB type-Cに対応したAirPods Proを発売したことにより販売数量を盛り返す。ソニーとのシェアは再び10ポイント程まで差が開いた。
BCNが10月中旬に実施したTWSの購入・利用実態調査によると、TWSの買い替え・買い増しを経験しているユーザーは半数を超えていた。また、次もTWSを購入する予定のユーザーは9割に達しそうな勢いだ。しかし、更に市場を拡大していくためには、新規購入者の取り込みが必須。いかにTWS非利用者に製品を利用してもらうかが今後の課題となってくるだろう。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。