(C)2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』(11月23日公開)

 東京都民から迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗(GACKT)率いる埼玉解放戦線の活躍によって自由と平和を手に入れた。麗は「日本埼玉化計画」を推し進め、埼玉県人の心を一つにするため、越谷に海を作ることを計画。そのために必要な白浜の美しい砂を求めて和歌山へと向かう。

 そこで麗は、関西にもひどい地域格差や通行手形制度が存在しているのを目の当たりにする。そして大阪府知事がめぐらせた陰謀が、やがて日本全土を巻き込む東西対決へと発展していく。

 埼玉県の自虐ネタを詰め込んだ魔夜峰央のギャグ漫画を実写映画化して話題を呼び、大ヒットを記録した「翔んで埼玉」のシリーズ第2弾。監督は前作に引き続き武内英樹、脚本も徳永友一が担当。

 GACKTと、もう一人の主役である壇ノ浦百美役の二階堂ふみのほか、新キャストとして、通行手形制度撤廃に向けて滋賀県人たちを導く「滋賀のオスカル」こと桔梗魁を杏、関西を牛耳る冷酷無比な大阪府知事・嘉祥寺晃を片岡愛之助が演じる。徹底的にカリカチュアされた面々の中でも、妻の藤原紀香(兵庫県知事役)の存在までもパロディーにしたような愛之助のキャラクターが面白い。

 前作よりもスケールアップし、くだらなさも倍増。武蔵野線、越谷レイクタウン、行田タワー、甲子園球場、琵琶湖、とび太くん、鹿、白浜ビーチなどに関するネタも大いに笑える。おまけに『チャーリーとチョコレート工場』(05)や『タイタニック』(97)のパロディー、そして往年のバズビー・バークレー調のミュージカルシーンまで飛び出す始末。

 先頃、秋田県知事が、愛媛特産の「じゃこ天」をばかにしたことから、逆に「じゃこ天」が注目されたように、マイナスがプラスに転化するというひょうたんから駒的な現象もある。となると、今回“標的”となった滋賀、奈良、和歌山のほかにも、“ばかにされたい県”があるのではないか。そうなると、さらなるシリーズ化も見えてくる?

『首』(11月23日公開)

 天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい攻防を繰り広げていた。そんな中、家臣の荒木村重(遠藤憲一)が謀反を起こして姿を消す。信長は明智光秀(西島秀俊)や羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣たちを集め、自身の跡目相続をエサに村重の捜索命令を下す。

 秀吉は弟の秀長(大森南朋)や軍師の黒田官兵衛(浅野忠信)らと共に策を練り、元忍の芸人・曽呂利新左衛門(木村祐一)に村重を探すよう指示。実は秀吉はこの騒動に乗じて信長と光秀を陥れ、天下を取ることを狙っていた。

 宣伝文句は、北野武監督が構想に30年を費やして監督・脚本を手がけ、本能寺の変を題材に壮大なスケールで活写した戦国スペクタクル映画。武将や忍、芸人、農民らさまざまな人物の野望と策略が入り乱れるさまを、バイオレンスと笑いをちりばめながら描き出すというもの。

 ところが、「見たことがないような戦国物を見せる」と豪語していた割には、グロテスクなシーンや男色シーンが目立つだけであまり新味はない。戦国版の「アウトレイジ」(暴力団抗争)を見せられたような感じがした。

 何より、たけしの秀吉が年を取り過ぎていて違和感があった。せめて他の役者にやらせれば随分印象は変わったと思うが…。

(田中雄二)