テレワークの普及とともに、オンライン会議の機会も増えた。リアル会議と違い、オンラインの場合は配布資料も必然的にオンライン化する。そのため、資料の印刷やコピーといった作業は以前に比べて格段に少なくなった。書類をスキャンする機会も同様、かなり減ったように思う。ところが、10月に始まった消費税のインボイス制度や来年1月から本格始動する電子帳簿保存法による電子データの保存が義務化されることで、スキャナに注目が集まっている。紙で受け取った帳票も電子データ化して一元管理したいというニーズが高まっているからだ。
スキャナの売り上げは、この夏以降回復基調。7月に販売台数前年比で120.0%を記録して以降、販売台数は2桁増を維持している。販売金額は8月、9月とわずかに前年を割れたが、10月には台数112.0%、販売金額も112.6%と、いずれも前年を大きく上回った。11月もこの勢いが続いている。メーカーシェアも大きく変動した。昨年まで販売台数で4割以上のシェアを維持し安定的なトップシェアを維持していたのがPFUだ。しかし、今年に入って大きくシェアを下げ、6月には18.8%と2割を切る場面もあった。入れ替わる形でシェアを上げてきたのがキヤノンとエプソン。2月にキヤノンが35.6%でシェアトップに立つと、5月まで3割以上のシェアを守りトップを維持。しかし、6月には追い上げてきたエプソンがシェア37.1%でトップを獲得。9月までトップを維持した。10月にはシェアを回復してきたPFUが33.6%で久々にトップシェアを奪還。ところが翌11月にはエプソンが33.5%で再びトップを取り戻すという、激しいシェア争いが続いている。
エプソンで最も売れているモデルは「GT-S660」。平均単価(税抜き、以下同)が1万円を切る安価なフラットベッド型だ。書類だけでなく写真のスキャンにも対応する。キヤノンの売れ筋は「CANOSCANLIDE400」。同様に1万円を切る安さが魅力のフラットベッド型だ。一方、PFUの売れ筋は「ScanSnap iX1600」。平均単価4万円を超えるA4対応のフラッグシップモデル。紙送り機能がついたシートフィード型だ。両面原稿でも1分間で40枚スキャンできる。こうした基本機能の高さが人気を呼んでいる。上位3社のうち、ドキュメント系の業務に強いシートフィード型の販売台数を見ると、最もシェアが高いのがPFUで95.4%。一方キヤノンはわずか14.7%、エプソンはその中間で41.6%だ。これら3社は、ドキュメントスキャン用途でPFU、フラットベッド型のちょっとしたスキャンでキヤノン、ドキュメントフィード型とフラットベッド型を幅広くカバーするエプソンと、それぞれの得意分野で棲み分けていると言えそうだ。(BCN・道越一郎)