HSは「サウンド関連ソフト」でシェア30.8%を占め、クリプトン・フィーチャー・メディア(21.2%)を抑えて初の1位に輝いた

家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、部門(ジャンル)ごとに年間販売数量累計1位の企業を表彰する「BCN AWARD」は、今年、25回目を迎え、111部門・56社が受賞した。2023年1月1日~12月31日の年間データを集計した「BCN AWARD 2024」のトピックスの一つは、「サウンド関連ソフト」部門の1位交代。「Synthesizer V」シリーズを手がけるAHSが初受賞を果たしたのだ。同社は前年に引き続き「ユーティリティソフト」部門も受賞し、ダブル受賞となった。

「VOICEPEAK 商用可能6ナレーターセット」がヒット!

まず、7年連続7回目の受賞となった「ユーティリティソフト」部門でのAHSの強みを紹介しよう。ユーティリティソフトは「ラベル作成」「伝票印刷」といった事務作業や「PC最適化」などのさまざまなお役立ちソフトを対象とした部門で、23年は一般企業からの引きも強いAHSの「VOICEPEAK 商用可能6ナレーターセット」が年間を通じて最も多く売れ、AHSのシェアは前年を超える35.7%に達した。

VOICEPEAKは、最新のAI音声合成技術を搭載し、手軽に読み上げさせることが可能な入力文字読み上げソフト。「2022年グッドデザイン賞」を受賞した「VOICEPEAK 商用可能6ナレーターセット」は6人のナレーターに加え、幼い「女の子」の声も収録し、喜怒哀楽の感情表現も搭載している。規約の範囲内であれば特別な申請などなく商用利用が可能で、企業・団体・教育機関などから動画配信をする個人まで使い勝手は高い。価格もパッケージ版で2万円台と手ごろだ。デモ音声は公式サイトで聞くことができる。

キャラクターを使用した個人ユーザー向け製品では、元々高いシェアを誇っていた「VOICEROID」シリーズに加え、新たに「VOICEPEAK」シリーズが登場。最新技術による高品質な読み上げや、キャラクターごとの個性を表す感情表現も好評を得ている。これらの総合的な売り上げ上昇がシェアを押し上げた。

新しい魅力的な歌声合成ソフト「Synthesizer V Pro」が人気に

「サウンド関連ソフト」でもシェア30.8%で、クリプトン・フィーチャー・メディア(21.2%)を抑えて初の1位に輝いた。製品別でみても、高性能なエディタと歌声データベースを手ごろな価格で使用できる「Synthesizer V Studio Pro スターターパック」がトップに立ち、1位獲得の原動力となった。

「Synthesizer V」と「初音ミク」で知られるVOCALOIDは主たる技術が異なり、Dreamtonicsが開発した音声合成ソフトウェアである「Synthesizer V」は18年に登場したソフトウェアだ。ほかに「Synthesizer V AI 重音テト」「Synthesizer V AI 桜乃そら」(ともに音声合成ソフト「Synthesizer V Studio Basic」付属)などが人気を集めた。

実はあの人気MVの小学生キャラは……

AIによる合成音声によるナレーションや歌唱曲はもはや珍しくなく、特に歌については、音楽の一ジャンルとしてすっかり定着したといえるだろう。

AHSはVOCALOIDソフトも発売しており、投稿からわずか12日でYouTubeで100万再生を達成したボカロP・ゆこぴ氏の楽曲「強風オールバック」を歌う「歌愛(かあい)ユキ」は、実はAHSのキャラクターだ。歌愛ユキは同曲のMV、同曲の替え歌が使用された「日清食品のCM」にも出演した。

インターネット動画にあまり興味のない人でも、「強風オールバック」の楽曲は耳にしたことがあるはず。愛すべき小学生キャラ・歌愛ユキは、初音ミクと並んでファンの間で話題になったが、同じ年に、販売実数に基づいて表彰する「BCN AWARD」でもAHSがトップを獲得したことは興味深い。

BCN AWARD受賞の喜びの声として、AHSからコメントをいただいた。

「ユーティリティソフト部門では7年連続、サウンド関連ソフトでは念願の初受賞ができたことを大変光栄に存じます。弊社は創業以来、ユーザーの皆様、パートナー企業様の信頼を得られるよう、さまざまな面において努力してまいりました。今後は、AIを活用したプロダクトやソリューションなどの技術も加速的に進歩してまいりますので、さらに市場を盛り上げられるよう、これからもお客様のニーズに誠実にこたえ、驚きと感動を与えられる製品を提供してまいります」

今やAHSがけん引したといっても差し支えない合成音声による音声読み上げ・ナレーション、合成音声技術を利用した楽曲と映像が融合した音楽カルチャーのさらなる盛り上がりに今後も注目だ。