舞台は第二次大戦直後の朝鮮半島。敗戦で「難民」と化した現地邦人の集団引き揚げを成功させた“もう一人の杉原千畝”、その実像にせまる驚愕の発掘ノンフィクション作品です。





新聞、週刊誌、通信社など数多のメディア、オンラインメディアの書評で取り上げていただき、たくさんの読者から反響が寄せられている本書。このたび3刷が決定しました。一人でも多くのかたに届けたい「知られざる近代史」が、ここにあります。

■内容紹介

1945年8月15日、植民地だった朝鮮半島に取り残された日本人の運命は一変します。ソ連軍が侵攻してきた北緯38度線の北側では略奪や暴行、性暴力が横行し「生き地獄」に。食料が尽き、疫病が蔓延するも、かつて要職に就いていた役人や有力者たちの大半は、民間人を見捨てて我先にと本土へ逃げ帰ってしまいました。

「難民」の状態に置かれた何万人もの老若男女の前に忽然と現れ、母国へと導いた男。それが、松村義士男(ぎしお)という一介の市民、かつて国家から断罪された“アウトサイダー”でした。驚くべき度胸と頭脳、行動力でソ連兵の監視をかいくぐり、およそ6万人もの集団脱出工作を成功させた彼は、やがて「引き揚げの神様」と呼ばれるまでになります。私的な借金までつくって同胞の脱出費用に充てていた松村の「究極の利他」とは……。
歴史に埋もれた英雄の姿を蘇らせる、発掘ノンフィクション『奪還 日本人難民6万人を救った男』。戦後80年という節目を前に、是非とも手に取っていただきたい1冊です。

■本文「はじめに」より抜粋

松村は当時、三十四歳という若さであり、一介の民間人に過ぎなかった。しかも戦前には、治安当局の弾圧に遭い、世間からは「アカ」と白眼視された“アウトサイダー”だった。
そんな人物がなぜ、敗戦によって日本が国家としての主権を失い無力だった状況で、在留邦人を引き揚げさせるために身を賭したのか――。

■推薦コメント

棄民にされた日本人の老若男女を引き連れ、
飢餓や疫病が蔓延するなか、北朝鮮・ソ連の包囲網を突破する。
驚くべき脱出行は、私の戦後知識の「空白」を見事に埋めてくれた。
――清水潔氏

■著者コメント

「生と死が隣り合わせだった終戦直後の北朝鮮で、『究極の利他』を実践した無頼の人、松村義士男。
とかく利欲に走りがちな現代社会だからこそ、彼の生きざまを伝えたい」

■目次

はじめに

第一章 棄民
その日、故郷は「外国」になった
平穏だった八・一五
老いも若きも赤旗を振り
総督府は責任を丸投げ
明暗分けた南と北
突然の空爆
応戦するすべを持たず
民間人を見捨てた要塞司令部
「大きなバッタの群れみたいだ」
炎暑の逃避行/山中で敗戦を知る
鏡に映った自分に泣く
ソ連兵によるすさまじい略奪
「マダム、ダワイ!」
朝鮮人の自警団による横暴も
家屋を奪われた在留邦人
北から押し寄せる避難民
そして在留邦人は放置された

第二章 異端の人、動く
対ソ連の最前線で終戦を迎える
捕虜収容所へ連行中に逃亡
“左翼運動の手伝い”で中学退学
労組再建を画策し逮捕される
共産党に「入党するの要なかるべし」
二度目の検挙/再び朝鮮へ
ソ連軍に“顔が利く”
避難民の惨状に苦悶
同志・磯谷との再会
二人三脚
「このままでは日本人は死に絶えてしまう」
日本人組織「大改編」の絵を描く
「一枚の看板」の効果
日本窒素の街にも避難民が殺到
みじめな弁当にみせた怒り

第三章 包囲網を突破せよ
終戦の年、八万人が南に
強制移住先での惨状
「飢餓の村、死滅の村なり」
山野を揺るがした慟哭
京城行きを決断
元警察幹部と協力を誓う
集団脱出構想の具体化
試験的南下
脱出専門組織の結成
「朝鮮人の信用博す」
白昼堂々、鉄道での大量輸送
興南でも集団移動
画期的な“病院列車”
松村が残した獣道
モスコーと呼ばれた若い女性
三八度線を飛び越えた
海路での試験的脱出
幻の“大集団渡航工作”
月明かりの船出
下船するとそこは……
まるで別世界のテント村

第四章 苦難そして苦難
突然の移動禁止令
米ソ間の攻防
“死の三八度線越え”を繰り返し試みたが
託された手紙
強い信頼と期待を背負って
動かぬ平壌
東大生、金日成に直談判
松村、平壌駐在を画策
幽閉された技術者たち
ニセ情報
磯谷との確執
膨らむ疑念

第五章 引き揚げの神様
「堤がふたたび破れた」
「日本人の命を保証することができるのか!」
たった一日で出航させた船団
活気あふれた城津工場
「引き揚げの神様」来る
アパトフ列車
ソ連軍、集団脱出を応諾
保安署に拘束されるもすぐに釈放
十三歳が見た「神様」
興南技術者の逃避行
闇船で技術者を送り出す
「転落の女性」が歌う古里の歌
不信と対立の構図
遅延に遅延を重ねた「正式な引き揚げ」
三八度線が生んだ巨星

おわりに

■書籍内容

太平洋戦争の敗戦で朝鮮半島北部の邦人は難民に。飢餓、伝染病、ソ連軍の監視下で老若男女を母国へと導いた松村義士男の「究極の利他」がいま甦る。驚愕の脱出実話。

■著者紹介

城内康伸(しろうち・やすのぶ)
1962年、京都市生まれ。中日新聞社入社後、ソウル支局長、北京特派員などを歴任し、海外勤務は14年に及ぶ。論説委員を最後に2023年末に退社し、フリーに。著書に『シルミド―「実尾島事件」の真実―』『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史―』『昭和二十五年 最後の戦死者』(第20回小学館ノンフィクション大賞優秀賞)『金正恩の機密ファイル』など。

■書籍データ

【タイトル】奪還/日本人難民6万人を救った男
【著者名】城内康伸
【発売日】2024年6月17日
【造本】四六判/ハードカバー(224ページ)
【定価】2,090円(税込)
【ISBN】978-4-10-313733-7
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/313733/
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