負債総額は927億5900万円、2カ月ぶりに前年同月を下回った




株式会社帝国データバンクは、2024年8月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析を行った。

<概況>
- 倒産件数は746件(前年同月742件、0.5%増)と、28カ月連続で前年同月を上回った。8月としては、前年(742件)を超え、過去10年で最多となった
- 負債総額は927億5900万円(前年同月995億100万円、6.8%減)と、2カ月ぶりに前年同月を下回った。負債額トップは、鋼船製造・修理を行っていた(株)クレサービス(旧:(株)神田造船所、広島県、特別清算)の109億4700万円






<主要ポイント>
- 業種別にみると、7業種中3業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月187件→197件、5.3%増)が最多。増加率でみると、『卸売業』(同79件→96件、21.5%増)が最も高かった。『小売業』の「飲食店」(同56件→72件)や『卸売業』の「飲食料品卸売」(同13件→32件)が増加し、食品関連の倒産が目立った
- 地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を上回った。最も件数が多かった『関東』(前年同月294件→279件、5.1%減)は19カ月ぶりに前年同月を下回った。最も増加率が高かったのは『四国』(前年同月12件→18件、50.0%増)で、5カ月ぶりに50%以上の増加率となった。2024年1-8月の累計では、すでに5県が2023年通年の件数を上回った
- 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は41件発生し、初めて前年同月を下回った
- 「人手不足倒産」は22件発生し、4カ月ぶりに前年同月を下回った
- 「公租公課滞納倒産」は13件発生し、前年同月から倍増した
- 「物価高倒産」は64件発生し、2022年3月以降30カ月連続で前年同月を上回った

集計期間:2024年8月1日~2024年8月31日
発表日:2024年9月9日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク
※調査結果は下記ホームページでも掲載している
https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/index.html

■ 業種別 7業種中3業種で前年同月を上回る 『小売業』が24カ月連続で前年同月を上回る
業種別にみると、7業種中3業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月187件→197件、5.3%増)が最多、『小売業』(同148件→169件、14.2%増)、『建設業』(同148件→122件、17.6%減)が続いた。『小売業』は、2022年9月(108件)以降、24カ月連続で前年同月を上回った。『運輸・通信業』(同31件→28件、9.7%減)は、2カ月連続で前年同月を下回った。増加率でみると、『卸売業』(同79件→96件、21.5%増)が最も高かった。

業種を細かくみると、増加件数が最も多かった『小売業』では「飲食店」(前年同月56件→72件)が大幅に増加した。『卸売業』でも「飲食料品卸売」(同13件→32件)が増加し、食品関連の倒産が目立った。また、『サービス業』では、「医療業」(同9件→15件)が増加した。





『不況型倒産』は620件 『不況型』以外の主因項目は前年同月を下回る
主因別にみると、「販売不振」が613件(前年同月565件、8.5%増)で最も多く、全体の82.2%(対前年同月6.1ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月132件→161件)が最も多く、「小売業」(同120件→147件)が続いた。業界不振(同7件→4件、42.9%減)などを含めた『不況型倒産』の合計は620件(同575件、7.8%増)となり、28カ月連続で前年同月を上回った。

「放漫経営」(前年同月13件→9件、30.8%減)は7カ月ぶりに10件を下回った。また、「その他の経営計画の失敗」(同32件→27件、15.6%減)など、『不況型』以外の主因項目は前年同月を下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計





■倒産態様別 「破産」が847件、28カ月連続で前年同月を上回る
倒産態様別にみると、『清算型』倒産は724件(前年同月730件、0.8%減)となり、全体の97.1%(対前年同月1.3ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は22件(同12件、83.3%増)発生し、2カ月連続で前年同月を上回った。

『清算型』では、「破産」が693件(前年同月703件、1.4%減)で最も多いものの、2年5カ月ぶりに前年同月を下回った。「特別清算」は31件(同27件、14.8%増)と前年同月を上回った。
『再生型』では、「民事再生法」が21件(同12件、75.0%増)となり、10カ月ぶりに70%を超える増加率となった。このうち、個人が19件、法人が2件だった。





負債「5000万円未満」が最多 全体の63.4%を占め、過去3年で最高の構成比
負債額規模別にみると、「5000万円未満」が473件(前年同月433件、9.2%増)で最も多く、全体の63.4%を占めた。2021年9月以降、過去3年で最高の構成比となった。「1億円以上5億円未満」が156件(同156件)で続いた。「5000万円以上1億円未満」は88件(同113件、22.1%減)となり、約3年ぶりに減少率が20%を上回った。

資本金規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が529件(前年同月491件、7.7%増)となり、全体の70.9%を占めた。






■業歴別 『新興企業』は286件、12年ぶりに10カ月連続で200件を上回る
業歴別にみると、「30年以上」が229件(前年同月228件、0.4%増)で最も多く、全体の30.7%を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は11件(同11件)発生した。

業歴10年未満の『新興企業』(「3年未満」〈前年同月25件→37件、48.0%増〉、「5年未満」〈同47件→47件〉、「10年未満」〈同130件→154件、18.5%増〉)は238件(前年同月202件、17.8%増)だった。30カ月連続で前年同月を上回り、2000年以降で最長の増加期間となった。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同70件→89件、27.1%増)が最多、「小売業」(同43件→59件、37.2%増)、「建設業」(同34件→43件、26.5%増)が続いた。





 
■地域別 9地域中5地域で前年同月を上回る 『関東』は19カ月ぶりに前年同月を下回る
地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月294件→279件、5.1%減)だったが、19カ月ぶりに前年同月を下回った。このうち、「栃木」(同4件→12件)と「神奈川」(同50件→56件)の2県は増加した。『中部』(同79件→100件、26.6%増)は、「三重」(同8件→15件)が増加した。

最も増加率が高かったのは『四国』(前年同月12件→18件、50.0%増)で、5カ月ぶりに50%を超えた。次いで、『東北』(同36件→49件、36.1%増)は、「福島」(同5件→12件)の増加が目立った。一方、『北海道』(同24件→16件、33.3%減)は、2021年8月以来、3年ぶりに減少率が30%を上回った。

2024年1-8月の累計では、すでに5県が2023年通年の件数を上回った。






注目の倒産動向
ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産 2024年8月は41件発生 初めて前年同月を下回る
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、41件(前年同月62件、33.9%減)発生し、初めて前年同月を下回った。また、実際に融資額が判明した約520社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となった。「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約1010億1900万円にのぼり、国民一人あたり約840円の負担が発生している計算になる。



人手不足倒産 2024年8月は22件発生 1-8月累計は過去最多ペース
「人手不足倒産」は、31件(前年同月14件、121.4%増)発生し、前年同月から倍増した。2024年1-7月累計は213件と、過去最多となった前年同期(124件)を大幅に上回るペースで推移している。業種別では、『建設業』(12件)と『サービス業』(10件)で全体の7割を占め、突出している。



公租公課滞納倒産 2024年8月は13件発生 過去最多ペースで推移
「公租公課滞納倒産」は、13件(前年同月5件、160.0%増)発生し、前年同月から倍増した。2024年1-8月累計は113件と、過去最多だった前年同期(82件)を大幅に上回った。このペースで推移すると、2023年通年(123件)の件数を9月に超える見込み。業種別にみると、『運輸・通信業』(6件)が最も多かった。



物価高(インフレ)倒産 2024年8月は64件発生 「値上げ難型」は12件
「物価高倒産」は、64件(前年同月61件、4.9%増)発生し、2022年3月以降30カ月連続で前年同月を上回った。業種別にみると、『製造業』(14件)が最も多く、『建設業』(13件)、『卸売業』(11件)、『小売業』(11件)、『運輸・通信業』(11件)が続いた。また、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の倒産は12件発生した。




今後の見通し
「物価高倒産」過去最多ペース、1割超の企業が「全く価格転嫁できず」
帝国データバンクが8月28日に発表した「価格転嫁に関する実態調査(2024年7月)」によれば、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」が、過去最高の44.9%となったことが分かった。前回調査(2024年2月)から4.3ポイント上昇するなど少しずつ転嫁が進んでいるものの、依然としてコスト上昇分の5割以上を企業が負担する状況に変化はなく、1割を超える企業が「全く価格転嫁できない」状況が続いた。

企業の現場からは「これ以上の価格転嫁は難しい」との声も多いなか、8月の「物価高倒産」は64件判明。過去最多の年間件数を更新するペースで推移しており、このうち、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の倒産が12件を占めた。倒産全体の約1割を物価高倒産が占めており、各種原材料の高騰による中小企業への影響には引き続き警戒が必要だ。

M&A関連のトラブル表面化、信用調査に万全を期す必要性
中小企業がM&A関連のトラブルに巻き込まれるケースが複数表面化している。具体的には、買収後に現金等の資産を会社から抜き取り、約束した経営者保証の解除も行わないまま、会社を放置するなどの行為が問題になっている。これを受けてM&A仲介協会は8月26日、中小企業の事業再生や事業承継等を狙った“悪質な買い手企業”をリスト化し、会員間で共有すると発表。中小企業庁も同月30日、「中小M&Aガイドライン」の改訂内容を公表した。後継者問題を背景に中小企業のM&Aが広がるなかで、悪質な買い手に買収され、資産流出の末に倒産に追い込まれた中小企業も複数判明している。意図せずトラブルに巻き込まれないためにも、買い手側の信用調査に対し万全を期す必要がある。

2024年の年間合計、前年比2割増ペースで1万件超え
日銀による7月末の追加利上げ決定後の金融市場は、株式、為替相場ともに、8月以降も不安定な状況が続いている。8月23日に衆参両院の閉会中審査が行われ、日銀の植田総裁は、「経済・物価が見通しに沿って推移すれば、さらに金利を引き上げる考え」を繰り返し説明した。「金利のある世界」が広がりつつあるなかで、長年にわたって本業が回復せず利上げにも対応できない小規模事業者の淘汰が、これから一定数発生することは避けられそうにない。

当面注目される国内外の主なトピックとしては、1.米中経済の減速懸念、2.中東情勢の緊迫化、3.国内与野党の党首選および次期衆院選、4.米大統領選の行方などが挙げられる。いずれもすぐに倒産件数に影響を及ぼすものばかりではないものの、大手、中小を問わず、国内企業を取り巻く経営環境や、関連する経済政策が大きく変化する可能性もあり注視していきたい。

2024年8月の企業倒産は、小規模事業者を中心に746件発生し、28カ月連続で前年同月を上回った。前年同月からわずか4件増(0.5%増)にとどまり、前月までの増加ペースはやや鈍化している。これは、金融機関のリスケ支援等による下支えに加え、昔から「二八(にっぱち)」という言葉があるように、少ない営業日数や気候などから経済活動がスローダウンする2月、8月は、倒産件数が他の月に比べて低水準にとどまる傾向があることも影響したとみられる。

この結果、2024年1-8月の倒産件数は6553件となり、前年同期(5449件)を20.3%上回った。すでに2022年の年間合計(6376件)を上回っているうえ、前年を2割上回るペースで推移している。物価高や人手不足、追加利上げの影響が今後広がるなかで、企業倒産がすぐに減少に転じる要素に乏しく、2024年の年間合計は1万件(2023年:8497件)を超える見通しである。
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