2024年9月5日【横浜市中区・象の鼻テラス】
ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和6年9月5日(木)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する講座、ヨコハマ海洋市民大学2024年度第4回講座「すごいぞ!横浜港~元町の釣具店だけが知っている生物多様性~」を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
イベント概要
・ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2024年度講座の第4回目を開催した(年10回開催)。
・開催日時:令和6年9月5日(木)19:30~
・開催場所:横浜市中区 象の鼻テラス
・参加人数:45名(会場受講生24名、オンライン受講生12名、ゲスト3名、講師・実行委員6名)
・共催:海と日本プロジェクト、象の鼻テラス
・後援:(横浜市・海洋都市横浜うみ協議会)
すごいぞ!横浜港~元町の釣具店だけが知っている生物多様性~
2024年度第4回目の講座は「ヘチ釣りってご存知の方どれくらいいらっしゃいますか?」そんな質問で始まりました。
今回の講師は株式会社I.D.A代表取締役 安藤友彰(あんどうともあき)さんです。一昨年、おしゃれな雑貨や洋服、そしてカフェがたくさんある横浜の元町にヘチ釣りに特化した釣具屋さん( I.D.A.works )をオープンさせました。(https://www.instagram.com/i.d.a.works/)
そのヘチ釣りを知っている受講生はほんの数人です。「じゃあ、ヘチ釣りがどんなものか、そしてどんな魚が釣れるのかを動画で見てください。ちなみにこの動画の場所は鶴見の岸壁で、近くにはフレイユという施設があるところです。」
動画では50cmはありそうなクロダイが釣れていました。ほかにも釣れたキスをさばいて天ぷらにしておいしそうに頬張る講座の実釣スタッフ船山さんも登場。そのヘチ釣りの道具と言えば釣り竿、太鼓リールと呼ばれるシンプルな構造のリール、糸とちいさな錘と針だけです。なんとなく釣りは道具をそろえるのも大変で敷居が高いイメージなのですが、縮めた竿とリールは普段使いのリュックの中に入ってしまいそうです。
講師は「釣り業界と釣りの新しい形」という言葉を通して「釣り業界」を変えたい、みんなの生活環境を変えたい、社会を変えたい、より多くの社会貢献をしていきたい、そのために元町で釣具屋さんを始めたのだと語ります。
釣り業界の売り上げ規模は10年前に比べ倍になっている半面、釣り人口は半減しており、また大型店が増えることで町のちいさな釣具屋さんはかなり減っていて、釣り人ひとりがたくさんのお金をつかう、特別な趣味になっていると危惧されているようです。
講師は来店されたお客様には「釣りを経験してもらう」というだけではなく、さらにその先にある「釣って食べる幸せ」を感じてもらい、それをライフスタイルにしてほしいと願っています。
また、ご自身やスタッフも、その業界で長くなると派生してしまう閉鎖的な感覚に飲み込まれないような気配りをされているようです(どの業界でもありそうですね)。釣りを体験してくれた人にその先にどんな幸せを感じてもらえるのか、感じてもらいたいのかを意識してお仕事するようにしているとのことでした。
横浜港の海水は奇麗です。そして東京湾は世界一魚種が多く、栄養も豊かな豊饒の海です。でも工場排水のイメージが強く、釣れた魚を食べるということが想像しにくくなっているので、お店のスタッフがSNSで発信をする際は「釣れた魚を持ち帰り食べる」ところまで発信するようにしているとのことでした。たしかに釣れた魚をみんなでワイワイと食べるのは購入した魚に比べひと味違う気がしますね。
講師が横浜元町で釣具店を開くために、その地域に住む人々がどうやったら釣りをして幸せになれるのかをじっくりと考えたそうです(エリアマーケティング)。そしてその答えがシンプルな道具で始められるヘチ釣りでした。そしてそのヘチ釣りの入門道具を3,000円台というこれまでの数分の一で提供することで、地元元町の方に釣りを楽しんでもらいやすくして日本の釣り人口減少にストップをかけたい(負け犬市場からの脱却)、またSDGsとエコについてお店としての方針をしっかりと決めること(たとえ儲かっても環境負荷の高いと思われるものは扱わない)、他に負けない自分たちだけの強みを持つこと(コアコンピタンス)、ふつうに商品を仕入れる今までのやり方ではなく、製造・調達のところまで自社が参入するというD2Cにまで踏み込んだお話は非常に興味深いものがありました。ただこれはお店のノウハウにも関係しているのでここでの詳細は割愛します。興味のある方はぜひお店に足を運んで下さい。
そのほかにも講師は、横浜みなとみらいのエリアでの釣りは新しい風景になりうると考えているようでした。観光客の目の前で大きなクロダイを釣りあげるのも横浜ならではの風景なのだと言います。たしかに目の前で50cmのクロダイを釣りあげる観光地はなかなかないかもしれませんね。こんなところからも海を良くしたいというアプローチが始まっているのですね。海を身近に感じ、ヘチ釣りでいろいろな魚を釣りあげ、みんなでワイワイと美味しく食べる、そんなライフスタイルの提供が住民福祉にも貢献できるのだと講師は考えています。昨年元町のフードフェアではみなとみらいで釣れたクロダイのハンバーガーを提供したところ好評であっという間に140食を売り切ったそうです。ほかにも害魚といわれるエイやサメも食べるとおいしいので地域の人にも知ってもらい、食べてもらいたいと語っていました。
釣り糸(マイクロプラスチック問題)の代替はあるのか?という質問にはまだまだ難しいし、完璧をもとめると実現しなくなる(釣りを排除する話になる)。その代替方法として仕掛けのロスト(切れて海底にとどまってしまう)の少ないヘチ釣りを薦めているという回答でした。
さらにサメもエイもヘチ釣りで釣れるのか?という質問には「ぶっこみ」という釣り方に近づけて、イカ、イワシなどの餌を大き目の針につけ錘の大きさを変えることでよく釣れるようになるとの答えでした。
この後受講生は外へ出てヘチ釣りに挑戦しました。みんなでワイワイしながらの釣りだったのでお魚がたくさん釣れる雰囲気では無かったのですが、なんと小さめのクロダイが2尾、メジナが1尾、カサゴ1尾が釣れました!それもほんの20分くらいで!
魚を通じて命の尊さに触れ、いろいろな種類の魚を釣り、釣った魚を食べ、食育にも貢献していく海族の一つのライフスタイルを学ぶことがきました。さあ、みなさん釣りに行きましょう。
今年度ヨコハマ海洋市民大学は「さあ、海へ行こう。」というテーマで講座を開催します。実際の自分のアクションに落とし込めなければ学んだこともただの絵に描いた餅です。受講生の皆さんに自分自身のアクションが見つかることを願い、さまざまな講師にお願いをしています。また10回の講座の後には海族(うみぞく)による海族のための「海辺の文化祭」も予定しています。1年間一緒に学んで、自分のアクションを見つけましょう!
参加者の声
・人生2度目の釣りでクロダイが釣れて驚いた。
・みなとみらい地区の新しい風景としての釣り人を意識した。
・釣具店として、きちんとした社会貢献のビジョンがあり素敵だと思った。
<団体概要>
団体名称 :ヨコハマ海洋市民大学実行委員会
URL:https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/
活動内容:横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/
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