左)坂川 春雨橋親水広場《松戸宿坂川献灯まつり》 中)坂川 遊歩道《松戸宿坂川河津桜まつり》 右)春雨橋親水広場(2017年10月)
千葉県松戸市では、松戸駅近くを流れる利根川水系・一級河川の坂川を活かした「かわまちづくり」に取り組んでいます。「かわまちづくり」は、国土交通省が定める、地域の「資源」と「知恵」を活かした河川の利用促進による地域活性化や観光振興を目的とした取り組みであり、現在、全国286カ所で進められています。
松戸市の坂川においては、2000年に発足した「坂川とまちづくり市民の会」が中心となり、河川の清掃、並木の整備など、官民連携による水質改善への取り組みから、祭りやイベントなどのにぎわいづくりまで取り組んでいます。
※本資料内の情報は、2024年9月19日現在のものです。
住民参加型で進められている「坂川再生計画」
計画作りの段階から、住民参加型で進められてきた坂川の再生計画は、川沿いの歴史的な遺産や雰囲気を活かしながら、多自然型の川づくりや人々が集える水辺のプロムナード化などを実施しています。良好な河川空間の形成、都市の中の水辺空間を活かしたまちづくり、身近な自然の保全と創出、河川文化の保全を目的として取り組んでいます。
ユニークな桜の里親制度も。河津桜が楽しめる坂川沿いの遊歩道
かつて松戸宿として賑わった松戸。現在も寺社が多く、歴史的建造物等も残っています。その雰囲気を活かしながら、川沿いを散策できるよう、坂川沿いの遊歩道には多くの河津桜が植えられています。春には満開の河津桜のもと「松戸宿坂川河津桜まつり」も開催され、松戸の春の訪れを告げるイベントとして多くの人で賑わいます。また、桜の里親制度を設け、市民に寄付を募り、桜の植樹をするなど、地元の人たちがより坂川エリアに愛着がもてる活動も行っています。
かつての松戸宿の夏の風物詩を復活!古くて新しい「献灯まつり」
江戸時代、松戸の水田で収穫後の籾殻(もみがら)を積んだ山から発見された観音様が松龍寺(しょうりゅうじ)に祀られると、観音様のための縁日が行われるようになりました。旧松戸宿の夏の風物詩として行われていたものを、坂川の清流復活を期に、松龍寺や坂川を舞台とする新たな祭り「松戸宿坂川献灯まつり(以下、「献灯まつり」)」として復活しました。この名前は観音様の縁日にみんなで献灯を行ったという言い伝えにちなんでいます。江戸時代も行われていた「とうもろこし市」、そして「とうろう流し」や「縁日屋台」など、松戸の原風景である坂川の水辺で風情を味わいながら楽しめる、歴史と坂川の魅力が融合したお祭りです。
水と緑、歴史があふれる坂川沿いの憩いの場「春雨橋親水広場」
松戸駅から程近くにある「春雨橋親水広場」は、地域の歴史・文化の情報発信の場となる「まちなかの憩いの空間」として、また地域の交流拠点として活用されることを目指し整備しました。広場のほか、ウッドデッキやベンチ等も設置され、「献灯まつり」だけでなく、イベント会場としても活用されています。対岸側に設置された階段も同じ空間のようにデザインされています。
令和5年度には「かわまち大賞」受賞!千葉県初の快挙
「かわまち大賞」は、全国で進められている「かわまちづくり(264カ所※)」の中から、他の模範となる先進的な取り組みを国土交通大臣が表彰するものです。平成30年度の賞創設以降、これまで、10カ所を「かわまち大賞」として選定しています。
松戸市の坂川は、令和5年度に「かわまち大賞」を受賞しました。水と歴史と文化を活かしたにぎわいづくりに、約30年にわたり取り組んでいます。官民連携による河川の水環境改善にいち早く取り組み、さらに地元住民だけではなく、 市外からも多くの人々が訪れる「松戸宿坂川献灯まつり」、「松戸宿河津桜まつり」などのイベントで人が集うにぎわいの空間を創出しています。「かわまち大賞」の受賞は、関東地方では2例目、千葉県では初となります。
《「かわまち大賞」評価のポイント》
★河川が持つ水と緑の空間と宿場町として発展した周辺の寺社などの歴史的価値を結びつけ、坂川の水辺を中心とした都市再生につなげている。
★水質改善の取り組みを契機に、河川清掃や並木整備、祭り・イベントが継続して実施されており、自分たちの目の前の川を守り、育てていく姿勢が見られる。
★坂川沿いの春雨橋親水広場はデザイン性に優れ、その対岸側に設置された階段とが一体的な空間を形成し、両岸での対話が可能になっている点がデザイン性に優れている。
★地域の参詣文化を「献灯まつり」として復活させたり、市民からの桜の寄附を募る里親制度の取り組みは他地域の参考になる。
(国土交通省報道資料より)
「松戸宿坂川献灯まつり実行委員会」委員長石井忠英さんにお話を聞きました
松戸宿坂川献灯まつり実行委員会の委員長・石井忠英さん
毎年8月9・10日に開催される「松戸宿坂川献灯まつり」。松戸市内を流れる坂川沿いの松龍寺の夏の風物詩「とうもろこし市」にあわせて、平成18年8月に初めて開催され、今年17回目を迎えました(※コロナ禍の2年間は中止)。主催する松戸宿坂川献灯まつり実行委員会の委員長・石井忠英(いしいただひで)さんにお話を聞きました。
「献灯まつりは、もともと『坂川とまちづくり市民の会』の取り組みで川がきれいになったので、これを活かそうと始まった祭りです。バイパスを走る車以外に、なんとかお客さんを商店会に呼びたいという地域活性化の策でもありました。
実行委員のスタッフは地元や地域の方々で、ボランティアで活動しています。そして市内の中高生や大学生・各団体の方々もボランティアで参加しています。20年近く運営してきて、参加者からの口コミでボランティアが集まる好循環ができていましたが、コロナ禍で後輩に受け継ぐ環境が途切れ、今年は苦労しました。
参加者からは『知らない大人にありがとうと言われて嬉しかった』『お祭りと思って中途半端な気持ちだと痛い目にあう』といった感想もあり、運営の苦労とは違った気持ちを味わうことができるそうです。楽しいと思ってもらえたら受け継いでくれる。どうすれば喜ばれるか、常に考えるようになりました。商業面から始まった祭りですが、もっと松戸を知ってほしいし、誇れるものになったのでは、とも実感しています。
また、開催日を毎年8月9・10日に固定しているのも献灯まつりの特徴です。今年は金曜・土曜でしたので幸いしました。参加する若い世代からは、『日付にこだわらず土日開催にしてはどうか』という意見が出ており、検討課題になっています。」
石井さんは普段、松戸市と市川市の小・中学校、保育園の給食パンを製造・配達する創業70年の有限会社葛飾屋を経営。その傍ら、「松戸宿坂川河津桜まつり(3月)」、「松戸宿坂川献灯まつり(8月)」の実行委員長を担っています。
「松戸宿坂川献灯まつりのメインは『とうろう流し』。来場者が願いを込めて流したとうろうなので、粗末にできません。18時頃に坂川に流し、集まったとうろうをボランティアの方が回収して、ろうそくと“願いを書いた紙”を取り分けます。そして後日、松龍寺の境内でお焚き上げをして供養します。近年は外国人が見学に来ることも増えました。」
『かわまち大賞』の受賞については、「この度の受賞は、“憩いの場にしたい”という想いが形になった結果と受け止めています。シンボルである川をきれいにしようという想いが大前提。松戸を代表する祭りのひとつになったと自負しています」と話してくれました。
こうした石井さんたちの想いや「かわまちづくり」への取り組みが、今後も松戸市の魅力として引き継がれていくでしょう。
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