緊急事態宣言下の2020年4月から毎年定点調査を実施し4回目の調査レポート、なぜあきらめ感がトップになったのか

 人と組織の変革を支援するコンサルティング会社株式会社ジェイフィール(社長:高橋克徳、片岡裕司 本社所在地:東京都渋谷区 以下ジェイフィール)は2024年5月、職場で働く人々に「コミュニケーション・組織・感情」に関わるアンケートを実施しました。又、同時に、コロナウイルスが5類に移行してから1年経過し、コロナ前後で個人の価値観にどのような変化があったかも調査しました。

 この調査の一部は最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月から継続的に行われています。
コロナの終焉が見えなかった2021年4月(コロナ禍の1年間を経験)の調査では、組織、個人の感情とも「あきらめ感」「不安感」と言ったネガティブな感情がTOP3を占めていたのに対し、昨年、2023年4月の調査では「お互いに支え合おう、助け合おう」といった「支え合い感」や「認め合い感」が上位を占めていました。これは社会、経済活動が平常に戻りつつあることによる安心感や、物理的に分断された3年間で人と人とのつながりの重要性に気が付いたことに加えて、社会的風潮として多様性を認めるようになったためだと推測されます。

 ところが、昨年5月にコロナウイルスが5類に移行し、社会も組織も完全に日常が戻った今年の調査では、「なにをしてもこの状況は変わらない気持ち」という「あきらめ感」が個人と組織の感情共にトップになる結果が出ました。さらに、マネジャー層は一般社員層に比べネガティブな感情が大幅に増加していたため、業務に忙殺され、疲弊している様子が伺えます。
また、コロナ禍の約3年間を経た価値観の変化についての質問に対する一番多くの答えは「大きな変化はない」でした。
これは、会社や組織、働き方に大きな影響を与えると思われたコロナでしたが、今となっては、コロナ禍以前の状況に戻っているため、やはり何も変わらなかったのか、という「あきらめ感」につながっているのではないかと推測されます。

 新型コロナウイルスの感染拡大を経験し、再び日常へ。
働く時間や場所、人事評価、若手育成など様々な場面での変化を余儀なくされた全ての働く人、組織は、今後「何」に注力していけばよいのか。忙しいマネジャー層がイキイキと働き、組織全体が活性化するには「何」をすればよいのか。そんなヒントが見つかる調査結果を発表いたします。

■ 調査サマリー
- コロナウィルスが5類に移行してから1年間で、働く人の感情にどのような影響があったのかを定点観測をした。
働く人の感情を23年度と24年度で比べてみると、あきらめ感が極めて高くなっていたが、仕事の手応え感を示す効率実感や創造実感は激減していた。
マネジャーと一般職層の感情を23年度と24年度で比べてみると、どちらの年度もマネジャーの方がポジティブな感情が強く、ネガティブな感情が低かった。
上司部下、同僚とのコミュニケーションの量を見てみると、昨年度と今年度で大きな違いはなかった。しかし、コミュニケーションの質を見てみると、仕事以外の相談がしづらくなり、未来の会話もしづらくなっている様子が伺えた。
コロナ禍の約3年間を経て、価値観の変化について聞いてみたが、一番多かったのは「大きな変化はない」であった。ただし、次点では「仕事をお金のため」と割り切る人が増加しており、思いが離れていく様子が伺えた。
上記のことから、会社や組織、働き方に大きな影響を与えると思われたコロナ禍を経たが、社会全体ではそれほど大きな行動変容や価値観の変化につながらなかったと言えそうだ。
今では、コロナ禍以前の状況に戻っているため、個人として割り切る人が多くなり、人々のあきらめ感につながっていると推察される。そのため、未来に希望を持つことが難しくなっているのではないかと懸念される

■ 自分感情/組織感情 TOP5 時系列比較
Q.あなた/職場(周囲)が職場で働いていてるときの気持ちを聞く質問です。
最近の環境下で、あなた自身/職場(周囲)の気持ちに、どのようなものがありますか。
- 自分感情、組織感情ともに「あきらめ感」がトップになった。
- 自分感情では、トップ5 から「効率実感」が消え、「沈滞感」が入った。組織感情では、「緊張感」の高まりが見受けられた。
- お互いに連携しようする動きはあるものの、コロナ禍を経て会社にあまり変化が見受けられず、また、忙しさが戻ってきたため、この様な状態になっているのではないだろうか。





■ 自分感情/組織感情 時系列比較
Q.あなた/職場(周囲)が職場で働いていてるときの気持ちを聞く質問です。
最近の環境下で、あなた自身/職場(周囲)の気持ちに、どのようなものがありますか。
- 昨年度の同時期と比べると、自分感情では「あきらめ感」が高まり、「創造実感」、「効率実感」が下がっていた。
- 組織感情を見ると、「ぬるま湯感」が高まり、「認め合い感」と「効率実感」が下がっていた。
- コロナ禍を経て何か変化の兆しを感じるも、大きな行動変容がなかったことが要因ではないだろうか。




■ 自分感情 時系列比較 マネジャー&係長/一般社員1.
- 昨年度と今年度の時系列をマネジャー層と一般職層で区切ってみると、今年度のマネジャー層では「沈滞感」、「緊張感」といういわゆるネガティブな感情が高まり、「創造実感」、「効率実感」という仕事の手応え感を示す効力感が大幅に下がっていることが分かった。
- 今年度の一般職層では「あきらめ感」が高まり、「創造実感」、「効率実感」はマネジャー層同様に下がっていた。
- 階層別に見ても、ネガティブな感情が高まり、効力感が下がっている様子が伺えた。




■ 自分感情 時系列比較 マネジャー&係長/一般社員2.
- マネジャー層と一般社員層を比べてみると、23年度、24年度ともに、マネジャー層の方がポジティブな感情が高く、ネガティブな感情が低いことが分かった。
- マネジャーの方がイキイキして働き、孤軍奮闘している様子が伺えた。




■ 上司・部下とのコミュニケーション頻度 時系列比較
Q.あなたの上司や部下とのコミュニケーションで該当するものを選んでください。
- 昨年度と比べると、コミュニケーションの頻度(量)は大きく変わっていない。
- 他方で、「コミュニケーションが取れていない」が約2倍になっているが、劇的に増えているとは言えない。
- コロナ禍を経てもコミュニケーションの頻度は大きくは変わっていないと言えそうだ。




■ 上司・部下とのコミュニケーション内容(質) 増加ー減少GAP
- 上下間のコミュニケーションの内容では、一般職層が上司に対して「仕事以外の不安や悩みの相談」をしなくなる傾向が顕著に出ていた。
上司は部下と色々な話をしているという認識が高く、一般職層との認識のGAPが如実に出た。
コロナ禍が終わり、お互いに仕事中心の会話が増えたため、認識のGAPを生んでいる可能性がある。




■ 同僚とのコミュニケーション頻度 時系列比較
Q.あなたの同僚とのコミュニケーションで該当するものを選んでください。
- 同僚ともコミュニケーションが「取れていない」が増加しているが、コロナ禍前と大差はなかった。
同僚間ではある程度コミュニケーションが取れている様子が伺えた。




■ 同僚とのコミュニケーション内容(質) 増加ー減少GAP
- 同僚とのコミュニケーションの内容は、マネジャー層では仕事上のコミュニケーション以外は減少傾向にあり、将来の話や仕事以外の不安、悩みを相談しづらくなってきている様子が伺えた。
一般職層で見ると、「社会の未来」についての話し合いと「仕事以外の不安や悩み」を相談しづらくなっている様子が伺えた。
「仕事以外の不安や悩みの相談」については、前述の上下間のみならず、同僚間においても低下していた。




■ コロナ禍による価値観の変化 役職別
Q.コロナ禍(での職場/周囲の状況やその後の変化)を経験したことで、仕事に対するあなたの考え方や価値観に変化はありましたか?
- コロナ禍という大きなできごとがあっても、「価値観に変化がない」が一番多かった。
価値観の変化で一番多かった項目は、「仕事はお金のために割り切る気持ちが強まった」であった。
マネジャーと一般層でリモートワークの働き方を求める声についてGAPがあることが分かった。




■ コロナ禍による価値観の変化 年齢別  
- 年齢別に見ると、60代はコロナ禍でも動じておらず、加えて、多くの人が出社してみんなに会いたいと思っている様子が伺える。
30代はお金のための割り切り、リモートワーク中心で効率優先、ライフ中心に対する価値観が強まった傾向が伺える。
- さらには、管理職を避ける傾向にありそうだ。30代は他世代に比べて仕事に対する価値観が大きく変化していたと言えるだろう。




■ 提言
- コロナ禍が落ち着き、多くの会社がが出社中心、リアル中心の働き方に戻っている。加えて、仕事の量がコロナ禍以前に戻り、業務に忙殺されている様子が伺えた。この傾向は特にマネジャーが顕著に現れているが、組織全体として余白が減っている様子が伺えた。
コロナ禍を経ての価値観の変化から類推すると、世代間によりライフとワークのバランスにGAPがあることが再確認できた。また、勤務も出社を前提とするか、リモートワークを中心とするかで世代間にGAPが生じていた。このような多様な価値観をまとめるマネジャーのマネジメント負荷は更に高まっており、余白が減っているだろう。
だからこそ、マネジャーと部下の対話、さらには同僚同士の対話でも目の前の仕事の話だけではなく、社会の未来、個人や会社の将来のことを話す時間をあえて作る必要があると考える。なぜならば、未来の対話がないと近視眼的な発想が強まり、視野が狭くなってしまう可能性が高いからだ。
将来のことを考える余白がないと、未来に希望が持てない状況が続くだろう。そうすると、会社へのエンゲージメントは下がり、組織力は弱くなってしまうのではないだろうか。それがあらゆる会社で連鎖することで、最終的には日本の停滞感は強まる可能性があると危惧する。
今こそ、会社、組織、個人で大きな企てを考えることが必要な時期ではないだろうか。

■ 調査概要
- 調査形式 インターネット調
調査地域   全国
調査対象者(1.~3.and条件)    1.従業員数300人以上の民間企業の従業員   2.正社員   3.オフィスワーク勤務者
サンプル数  合計315s (内訳:部長相当35名、課長相当68名、係長相当37名、一般社員175名)          ※係長相当/一般社員のみ年代による均等割付を行っている
実査期間  2024年5月16日 ~18日




・調査の詳細URL:
https://www.j-feel.jp/note/jy53_isz2/
・ミドルマネジャーたちが自分達の経験から学び合い成長する場をつくる『リフレクションラウンドテーブル』はコチラ
https://www.j-feel.jp/program/16j5gyvhx7
・ジェイフィールがOJTの新しいカタチを提言しました。「育つ力」を育てる“共育型OJTプログラム”のご紹介はこちら
https://www.j-feel.jp/program/kd69g2f4zl/




■ 株式会社ジェイフィール



https://www.j-feel.jp/
個人に感情があるように組織全体に波及した感情、気分を「組織感情」と定義し、「組織感情をマネジメント」する企業向け研修を約250社、延べ10,000人に実施。ベストセラー「不機嫌な職場」(講談社現代新書(1926))を始め、「ワクワクする職場をつくる」(実業之日本社)など、組織活性に関する書籍を多数出版。「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ」と本気で思える人たちが増え、その人たちの知恵や想いが連鎖し、社会全体に波及していくことを目指して活動中。
「組織感情」「リフレクションラウンドテーブル」はジェイフィールの登録商標です
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